十和田湖および奥入瀬渓流

―十和田湖および奥入瀬渓流―
とわだこおよびおいらせけいりゅう

青森県十和田市 秋田県鹿角郡小坂町
特別名勝 1952年指定


 十和田湖は青森県と秋田県の県境に位置するカルデラ湖である。その形状はおおむね円形であるが、御倉半島と中山半島の二つの半島が南東部より突き出しており、湖を東湖(ひがしのうみ)、中湖(なかのうみ)、西湖(にしのうみ)の三地域に分けている。これらの半島やその周辺は、厳しい地形ながら紅葉樹や松が生え、紺碧の水と相まって極めて優れた湖水景観を作り出している。また、十和田湖から流れ出る唯一の河川である奥入瀬(おいらせ)渓流は、変化に富む地形や美しい植生に恵まれた風光明媚な渓流であり、日本を代表する渓流景観として知られている。




中山半島の付け根に位置する御前ヶ浜付近の光景

 十和田湖は度重なる噴火と二度の陥没によって生まれた二重カルデラ湖である。その噴火は約20万年前に始まり、まず十和田火山が作られた。約3万年前になるとその十和田火山が大噴火を起こし、それにより一帯は陥没して広く浅いカルデラとなった(現在の十和田湖全体)。その後の約1万年前頃、カルデラの南東部分で再び噴火が起き、小さな火山が作られる。そして約4000年前、その火山もまた噴火を起こして陥没し、狭く深いカルデラが形成され(現在の中湖)、現在見られる十和田湖の姿となった。




切り立つ御倉半島の五色岩
中山半島は女性的な景観、御倉半島は男性的な景観と言われている

 二度目に陥没した地域である中湖は、十和田湖の中で最も深いエリアである。その最大水深は327メートルと、日本三位の深さを誇る(なお、最初に陥没したカルデラにあたる東湖や西湖の水深は50メートルから70メートルであり、中湖の水深がずば抜けていることが分かる)。十和田湖の水の透明度の高さ、そしてこの深さによって、中湖の湖面は深い瑠璃色となっている。また、中湖は中山半島と御倉半島によって囲われているが、これは二度目の陥没の元となった小火山の名残だ。




深い渓谷を流れる奥入瀬渓流

 十和田湖から水が流れ出る奥入瀬渓流は、十和田湖の子の口から蔦川に合流するまで、およそ14キロメートル続く渓流である。その途中には水が飛沫となって岩とぶつかる激流や、ゆったりと流れる瀬や淵など、緩急のついた多様な流れを見ることができる。渓流の周囲には色鮮やかな紅葉樹や、緑の映えるコケ、羊歯類などが茂り、またその両側は切り立った渓谷となっており迫力がある。この断崖では渓流に注ぎ込む支流の滝が数多く見られ、それゆえ奥入瀬渓流は瀑布街道とも呼ばれている。




奥入瀬渓流にある景勝地の一つ、三乱の流れ

奥入瀬渓流は年間を通して水の量がおおむね一定であり、川が氾濫することがない(ただし現在は発電用水確保のため、水門で水量を管理している)。それゆえ中洲や岩、倒木などが水に洗われることなくコケや植物が定着し、まるで日本庭園のような幽玄なる景観を作り出しているのである。渓流に数多くある景勝地には、名が付けられ親しまれてきた。流れの中に見える岩が光によって輝く「飛金の流れ」、激しく力強い「阿修羅の流れ」、三つの清流が合流する「三乱の流れ」などが有名である。





 奥入瀬渓流の上流部分には幅約15メートル、高さ7メートルの銚子大滝という滝がある。この滝は魚類が上ることができず、それゆえ十和田湖には本来魚類は生息していなかった。しかしながら、明治27年に銚子大滝の横に魚道が設けられ、魚類が十和田湖に入り込んだ。この魚道は日本で始めてのものだという。また明治35年にはヒメマスの放流も行われ、現在の十和田湖には数種類の魚類が生息している。また、十和田湖には水力発電所の取水口がある。本来奥入瀬渓流に流れるべき水を発電に使用しているため、現在の奥入瀬渓流は昔より水量が少なくなっているという。

2008年10月訪問




【アクセス】

青い森鉄道「八戸駅」よりJRバスで約2時間15分。
JR奥羽本線「青森駅」よりJRバスで約3時間。
JR花輪線「十和田南駅」より秋北バスで約1時間20分。

【拝観情報】

十和田湖を巡る遊覧船あり。
また、奥入瀬渓流沿いには遊歩道が整備されており、歩く事が可能。