浄土寺浄土堂(阿弥陀堂)

―浄土寺浄土堂(阿弥陀堂)―
じょうどじじょうどどう(あみだどう)

兵庫県小野市
国宝 1952年指定


 現在の兵庫県小野市は、かつての播磨国賀東郡に属し、その一帯には南都東大寺の荘園である大部荘(おおべのしょう)が広がっていた。その小野市の中央部に位置する浄土寺は、東大寺の僧侶である俊乗房(しゅんじょうぼう)重源(ちょうげん)が、鎌倉時代初期に建立した仏教寺院であり、その境内には阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩の阿弥陀三尊像を安置する浄土堂が存在する。この浄土堂は、重源と、彼が宋より連れてきた土木技術である陳和卿(ちんなけい)が日本に伝え、完成させた、大仏様と呼ばれる特異な建築様式で建てられている。純粋なる大仏様の建築はわずか二棟しか現存せず、この浄土寺浄土堂はそのうちの一つとして貴重であり、国宝に指定されている。




浄土堂と対を成す薬師堂
浄土堂が純粋な大仏様なのに対し、薬師堂は大仏様に和様、禅宗様を混ぜた折衷様だ

 平安時代末期の治承4年(1180年)、東大寺は平家による焼き討ちを受け、主要伽藍を失った。復興の総責任者である東大寺大勧進職に就いた重源は、全国七箇所に東大寺の別所を建立し、東大寺復興の為の資金を集めたのだ。浄土寺は、そのうち播磨の別所として建立された寺院である。浄土寺の伽藍は、池を中心としてその西側に浄土堂(阿弥陀堂)が、東側には薬師堂が向き合う形で建てられているのだが、これは阿弥陀如来が住むという西方極楽浄土、薬師如来が住むという東方浄瑠璃世界をそれぞれ表すものだ。浄土堂は建久5年(1194年)、薬師堂は建久8年(1197年)の建立であり、いずれも重源が宋より日本にもたらした建築様式である大仏様によって建てられた。




浄土堂正面
三間ともに桟唐戸だが、中央のみ戸が大きく取られている

 大仏様とは、柱をくり貫いて水平材を通す、貫(ぬき)の技法を多用する建築様式である。その構造は合理的で耐震性が高く、後に宋より禅僧を介して日本に伝わった禅宗様と共に、日本古来の建築様式である和様にも取り入れられ、新和様や折衷様として発展するなど、鎌倉時代以降の日本建築に多大なる影響を与えていった。しかしながら、大仏様の建築自体は重源の死去と共に廃れてしまい、完全なる形で現存する大仏様の建造物は、東大寺南大門と浄土寺浄土堂の二棟のみだ。浄土堂と共に建てられた薬師堂は後に焼失し、室町時代の永正14年(1517年)に再建されたものの、その建築様式は完全なる大仏様ではなく、和様や禅宗様が取り入れられた、折衷様となっている。




組物は三手先の挿肘木であり、深い
隅扇垂や遊離尾垂木など、大仏様ならではの特徴も多々見られる

 浄土堂は桁行三間に梁間三間。一間の幅が20尺(約6メートル)と極めて広く、間数に対して規模の大きな建物である。屋根は本瓦葺の宝形造で、その隅棟の稜線は極めて直線的で反りが無い。垂木は端の部分のみを扇状に配した隅扇垂木(すみおおぎたるき)で、末端にはそれらの垂木を支える為の横材である、鼻隠(はなかくし)を取り付けている。組物は手前へせり出す三手先の挿肘木(さしひじき)で、斗はその下に皿板を付けた皿斗。また、中備には軒の荷重を分散する遊離尾垂木(ゆうりおだるぎ)が伸びるなど、純粋な大仏様の特徴を、余す所無く伝えている。正面の建具は三間とも桟唐戸であるが、西面の背後は三間とも広く開け放つ事が可能な蔀戸(しとみど)である。




浄土堂の裏側(西側)
堂内に西日を取り込む為、開放的な蔀戸となっている

 晴れた日の夕方にそれらの蔀戸を開くと、浄土堂内は西方浄土の世界へと変貌する。太い四天柱と三段の虹梁によって支えられ、天井を張らない化粧屋根裏である堂内は、驚くほどに広大な内部空間を有している。その中央に据えられた須弥檀の上に凛々しく立つのが、阿弥陀如来三尊像だ。鎌倉時代を代表する仏師の一人、快慶(かいけい)によって建久6年(1195年)に刻まれたこれらの像は、中尊の像高が5.3メートル、両脇侍は3.7メートルと巨大なもので、国宝に指定されている。蔀戸から取り込まれた夕日は、堂内を赤く染め上げ、三尊像を背後から照らして金色の光を周囲に反射させ、宙に浮かび上がらせる。それはまさに、阿弥陀如来が雲に乗って来迎する光景そのものだ。




境内北側に位置する、鎮守の八幡神社

 浄土堂の柱は、天井が高く見えるよう、上部に行くにつれ先細りさせたエンタシスであり、それぞれの柱には三方から虹梁が放射状に渡されている。虹梁の下部には白く塗られた錫杖彫(しゃくじょうぼり)と呼ばれる彫刻が施され、朱塗りの虹梁を引き締めるアクセントとなっている。虹梁の上には大瓶束(たいへいづか)が乗り、その上にはさらに虹梁が架かる。そのように組まれた三段の虹梁は、柱との連結部を支える挿肘木などと相まって、壮大かつダイナミックな空間となっている。また、浄土堂、薬師堂以外の建物としては、池の北側に浄土寺の鎮守社である八幡神社が鎮座している。その本殿は室町時代中期、拝殿は室町時代前期のもので、いずれも重要文化財に指定されている。

2010年05月訪問




【アクセス】

神戸電鉄「小野駅」より神姫バス「天神行き」で約10分、
「浄土寺バス停」下車すぐ。

神戸電鉄「明石駅」より神姫バス「社行き」で約70分、
「イオン小野前バス停」下車、徒歩約45分。

【拝観情報】

境内自由。

浄土堂の内部拝観は拝観料500円。
拝観時間は9時〜12時、13時〜17時(10月〜3月は16時まで)。

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