八女市八女福島

―八女市八女福島―
やめしやめふくしま

福岡県八女市
重要伝統的建造物群保存地区 2002年選定 約19.8ヘクタール


 福島県南部の八女市。その中心地である福島は、福島城の城下町として開かれた。江戸時代に入ると福島城は廃城となったものの、町人たちは福島を離れることなく周辺地域の産物が集散する在郷町として発展を続けた。提灯や仏壇などの工芸品も生産されるようになり、福島は商工業の町として賑わったのだ。明治時代の後期には軌道や国道が町の中心部から外れて通され、町の経済活動はそちらへと移っていった。福島の町は大きな開発を免れ、江戸時代からの町並みが残ることとなった。かつての往還道沿いには「居蔵(いぐら)」と呼ばれる土蔵造の町家が建ち並び、白漆喰の大壁が連なるその町並みは、統一感がありながらもバラエティ豊かな表情を見せてくれている。




紺屋町に連なる居蔵の町家

 戦国時代に肥前国の勝尾城を拠点としていた筑紫広門(ちくしひろかど)は、大友氏に属していたことから島津氏に攻められ領地を奪われる。しかし豊臣秀吉の九州征伐に乗じて領地を奪回。秀吉により筑後国上妻郡(現在の八女地域)の所領を与えられて山下城に入り、支城として天正15年(1587年)に福島城を築いた。しかし広門は関ヶ原の戦いにおいて西軍に属していたことから徳川家康によって改易されてしまう。その後の慶長5年(1600年)、石田三成を捕縛する功績を挙げた田中吉政(たなかよしまさ)が柳川城に入り、支城として福島城とその城下町が整備された。柳川から豊後へと至る往還道は城を迂回するように通され、その道沿いに町人地が築かれた。




屋原町や古松町には仏壇の店が数多く並ぶ

 元和6年(1620年)、福島は久留米藩の領土となり、また一国一城令が出されたこともあって、福島城は廃城となった。城郭や武家町は解体されたものの、町人地だけはそのまま残り、八女地域における交通の要衝、経済の中心地として存続していった。農産物のみならず、和紙、ハゼ蝋、提灯、仏壇、石工品、茶などといった特産品も開発され、商工業の町として多大な利益を得た。福島の町並みは、西から矢原(やばら)町、古松町、京町、宮野町、紺屋町、唐人町がコの字状に続き、そのうち西側の矢原町、古松町は提灯や仏壇を製造、販売する職人の家や商家が多く、また山に近い東側の唐人町、紺屋町には山産物や和紙、茶を扱う商家が集まっていた。




福島最古の居蔵である今里家住宅

 江戸時代、福島の町家は茅葺屋根が主流であったが、度々の大火に見舞われたことにより、防火性の高い「居蔵」と呼ばれる土蔵造の町家が盛んに建てられるようになった。福島に残る最も古い居蔵は天保9年(1838年)の今里家住宅であり、「於福島市中居蔵建始」の墨書を残している。居蔵は大正時代まで建て続けられ、今に残る特徴的な町並みが形成されるに至った。周辺地域に見られる居蔵と同様、福島の居蔵もまた桟瓦葺の入母屋造で妻入を基本とし、外壁のみならず軒裏まで白漆喰で塗り篭めて木部を露出させず、数ヶ所に窓を開いて鉄扉をはめる。正面と左右に下屋を降ろすが、近代の道路拡幅により軒切りされている家も多い。




居蔵の主屋と共に洋風の事務所が並ぶ酒蔵「喜多屋」

 福島の町割は、各家の敷地は間口が狭く奥行きの長い短冊状である。主屋の規模は三〜四間で統一されており、敷地の間口がそれ以上の場合でも主屋の規模は変えず、横に土蔵を並べている。主屋の平面は通り土間を設け、土間に沿って三〜四室の部屋を一列に配し、奥の座敷に面して中庭を築いている。通り土間の奥には炊事場が設けられ、主屋の背後には離れ座敷と土蔵などの附属屋を並べるのが一般的だ。居蔵以外の町家では、茅葺(現在はトタンに覆われている)や、真壁の町家、洋風建築など多様である。西矢原で醸造業を営む「喜多屋」の主屋は明治10年(1877年)のものだが、隣に並ぶ事務所は昭和13年(1938年)に建てられた洋風建築である。




福島八幡宮の境内に設営された、燈籠人形の「舞台」

 かつての城下町の南東部には福島八幡宮が鎮座しており、毎年秋分にその境内でからくり人形の芝居が奉納される。これは江戸時代中期の延享元年(1744年)、放生会の際に人形の燈籠が奉納されたことに始まると伝わり、「屋台」と呼ばれる組み立て式の漆塗り舞台で上演される。その規模は横幅14メートル、高さ8メートル、奥行き6メートル。三層二階建てで一階部分を舞台とし、二階部分は囃子場である。舞台の下から人形を操る「下遣い」と横から操る「横遣い」の人形が唄と囃子に合わせて舞い踊る、総勢50人以上もの人々によって演じられる壮大な芝居であり、「八女福島の燈籠人形」として国の重要無形民族文化財に指定されている。

2014年09月訪問




【アクセス】

西鉄天神大牟田線「西鉄久留米駅」から西鉄バス「八女営業所行き」で約35分、「福島バス停」下車、徒歩約5分。

JR鹿児島本線「羽犬塚駅」から堀川バス「羽矢線」で徒歩約15分、「福島バス停」下車、徒歩約5分。

【拝観情報】

町並み散策自由(ただし、住民の迷惑にならないように)。

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