宇佐神宮本殿

―宇佐神宮本殿―
うさじんぐうほんでん

大分県宇佐市
国宝 1952年指定


 大分県、国東半島の北西に位置する宇佐神宮は、八幡神こと応神天皇を主祭神とする、全国4万600社の八幡神社総本宮である。緑深い社叢に覆われた小椋山(おぐらやま、亀山とも呼ばれる)を中心として広がるその境内には、本殿の他にも数多くの摂社、末社が鎮座しており、また奈良時代、仏教の伝来によって宇佐神宮の境内に建てられ、明治時代の廃仏毀釈によって取り壊された、弥勒寺の礎石なども良好に残されている。それらが示すように、宇佐神宮は八幡信仰や神仏習合の発展を知る上で非常に重要な神社である。その宇佐神宮に残る建造物の中でも、中枢に座する本殿は、八幡造と呼ばれる古い様式を今に伝える貴重な神社建築として国宝に指定されている。




宇佐神宮本殿へと続く八幡鳥居と西大門

 宇佐神宮および八幡信仰は、極めて複雑な経緯を経て成立した。当時この地を治めていた宇佐氏は、宇佐神宮の南にある御許山(おともさん)に鎮座する磐座を祀っていた。この磐座信仰に渡来系の辛嶋氏が道教、仏教を持ち込み原始八幡信仰が誕生、さらに大神(おおが)氏が応神信仰を融合させて、八幡信仰が成立した。宇佐神宮の社殿は、奈良時代の神亀2年(725年)に第一殿が、天平元年(729年)には第二殿が、弘仁14年(823年)には第三殿が造営され、現在に通じる三殿形式となった。また、宇佐神宮は東大寺の大仏建立に協力した事によって、八幡神が東大寺に勧請され(現在の手向山八幡宮である)、それを皮切りに八幡信仰は爆発的に全国へと広まったのだ。




庶民の信仰を集めた宇佐神宮下宮

 宇佐神宮の社殿は、小椋山の頂上に建つ上宮(じょうぐう)と、麓に建つ下宮(げぐう)に分けられている。どちらも社殿の様式、および祭神は同じであるが、上宮は皇族など身分の高い人物が参拝する社殿であるのに対し、下宮は一般庶民の為の社殿であり、社殿の規模も一回り小さい。このうち国宝に指定されているのは、上宮本殿の第一殿、第二殿、第三殿の三棟だ。祭神は第一殿が応神天皇、第二殿が比売大神(ひめのおおかみ)、第三殿は神功皇后(じんぐうこうごう、応神天皇の母親)である。比売大神とは、一般的には主祭神に関係の深い女神を指すが、宇佐神宮では宇佐神宮成立以前より宇佐氏が祀っていた、御許山の磐座に降り立った三女神であるとされている。




立派な楼門を備えた、宇佐神宮上宮の回廊
本殿三棟は、この回廊の内側に鎮座する

 宇佐神宮の本殿は、向かって左から第一殿、第二殿、第三殿が順番に並んでおり、その周囲を、正面に楼門を構えた回廊が取り囲んでいる。本殿はいずれも切妻造平入の建物二棟を前後に並べ、それらを相の間で連結し、周囲に縁を巡らした構造となっている。このような様式の神社建築を、その名もずばり八幡造(はちまんづくり)と称し、宇佐神宮の本殿はその代表格である。連結する二棟はそれぞれ前殿を外院、奥殿は内院と呼ばれ、前殿の内部には椅子が、後殿には御帳台が置かれている。これは、昼には神が外院に座して執務を行い、夜になると内院へ移って休むというもので、このように昼夜で神が移動するという考えも、八幡造の神社ならではである。




宇佐神宮本殿、第三殿
柱の朱色に蔀戸の黒、金具の金と、コントラストが美しい

 本殿の規模は、内院が桁行三間に梁間二間、相の間は桁行三間に梁間一間、外院もまた桁行三間に梁間一間である。第一殿と第三殿の正面には、一間の向拝が設けられている。いずれも屋根は檜皮で葺かれているが、神社のシンボルである千木(ちぎ)や鰹木(かつおぎ)は乗っていない。切妻屋根二棟が連結する作りである為、屋根を横から見るとその断面はM字状になっており、中央の谷の部分には大きな樋が掛けられ、雨を流す仕組みである。柱や長押には朱色の漆が塗られ、正面三間に入れられた蔀戸(しとみど)は黒く、要所要所にはアクセントとして金具が散りばめられており、本殿をより色鮮やかに見せている。なお、社殿の内部には、相の間の横に設けられた扉から入る。




扉の部分が相の間、それより手前が外院、奥が内院である
扉の上部には金色に塗られた樋が渡され、雨水を受けている

 各地の主たる神社では、数十年に一度、社殿を丸ごと建て替え、社殿の穢れを払う、式年造替が行われていた。宇佐神宮では33年ごとに実施され、幕末まで続いていた。その為、現在の宇佐神宮本殿は、最後に造替が行われた際に建てられたものであり、第一殿が万延元年(1860年)、第二殿が安政6年(1859年)、第三殿が文久元年(1861年)の建立と、国宝建造物としては非常に新しい。それでもなお国宝に指定されたのは、八幡造の代表例としての価値に加え、式年造替によって定期的に建て替えられてきた事により、古代より建築技法が変わる事無く受け継がれ、今でも当時と変わらぬ古い様式を残している点が評価されたのである。

2010年07月訪問




【アクセス】

JR日豊本線「宇佐駅」より大交北部バス「四日市方面行き」で約10分、「宇佐八幡バス停」下車、徒歩約5分。

【拝観情報】

拝観時間は4月〜9月が5時30分〜21時、10月〜3月が6時〜21時(ただし正月期間中を除く)。

【関連記事】

田染荘小崎の農村景観(重要文化的景観)
富貴寺大堂(国宝建造物)
石清水八幡宮本社(国宝建造物)