出雲大社本殿

―出雲大社本殿―
いずもたいしゃほんでん

島根県出雲市
国宝 1952年指定


 島根県の東部、中国山地から流れる斐伊川(ひいかわ)と神戸川(かんどがわ)によって、島根半島との間に形成された沖積地が広がる出雲平野。その北西端、八雲山を背に境内を構える「出雲大社」は、伊勢神宮と共に日本神話に起源説話を持つ屈指の古社である。創建以降、度々の造営遷宮が行われており、現在の境内は江戸時代前期の寛文七年(1667年)に整備されたものをベースとし、本殿を始めとする中枢部は江戸時代中期の延享元年(1744年)に造替されたものである。本殿は出雲地方特有の神社建築様式である「大社造(たいしゃづくり)」で築かれており、その高さは八丈(約24メートル)にも及ぶ最大規模の神社建築として国宝に指定されている。




「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)」を主祭神とする出雲大社本殿
なお出雲大社は明治4年(1871年)まで「杵築(きづき)大社」と呼ばれていた

 『古事記』や『日本書紀』によると、大国主大神が治めていた葦原中国(あしはらのなかつくに)を天照大御神(あまてらすおおみかみ)に譲る際、その条件として造営させた宮殿が出雲大社の起源であるとする。少なくとも8世紀には巨大な社殿が存在しており、当初は32丈(約96メートル)、平安時代は16丈(約48メートル)であったという。実際、古来より社殿の高大さを伝える史料や伝承が少なくなく、また平安時代中期から鎌倉時代初期の約200年間に7回倒壊した記録が残り、不安定で倒れやすい構造であったことが分かる。平成12年(2000年)には三本を一束にした柱が発見され、これは宮司家に伝わる古代社殿の平面図『金輪御造営差図』と一致しており伝承の信憑性が高まった。




屋根の破風は緩く反り、大棟には外削(そとそぎ)の千木と三本の鰹木が乗る

 現在の本殿は一辺が三丈六尺(約10.9メートル)の正方形の平面を持ち、桁行二間、梁行二間である。高床倉庫のように床を高く張り、四方には高欄付きの縁を巡らしている。このような「大社造」の特徴は、大陸から伝播した仏教寺院建築の影響を受ける以前のものである。弥生時代における貴人の宮殿建築を踏襲するものと考えられ、伊勢神宮の「神明造(しんめいづくり)」や住吉大社の「住吉造(すみよしづくり)」と共に最も古い神社建築様式とされる。屋根は檜皮葺、切妻造の妻入であり、大棟には千木と鰹木を置いている。千木は祭神が男神であることを示す外削で、鰹木は三本と社殿の規模にしては少ないが、これは大社造では鰹木が三本に固定されているためである。




本殿の背後からは柱や梁がよく見える

 出雲大社の本殿は礎石の上に九本の柱を田の字状に立てて築かれており、そのうち正面及び背面中央の柱は棟木を支えるもので「宇豆柱(うずばしら)」と呼ばれている。また内部中央の柱は直径1メートルを超える特に太いものであり、古来より「心御柱(しんのみはしら)」と呼ばれ神聖視されてきた。桁行二間のため建物の中央に出入口を作ることができないことから正面向かって右の間に「御扉(みとびら)」と呼ばれる板扉を開き、左の間には蔀戸(しとみど)を吊るし、正面以外の三方は板壁としている。御扉の前には昇降のための木階(きざはし、階段)を備え、階隠(はしかくし、傾斜した屋根)で覆い、木階を雨から守っている。




本殿の西側には摂社の神魂御子神社本殿(重要文化財)が建つ
摂社には宇豆柱がなく板扉、木階、階隠は正面中央に設けられている

 内部は心御柱の右側が板壁で仕切られており、最も奥まった右奥に「大国主大神」を祀る内殿が左向きで安置されている。この内殿もまた本殿の附けたりとして国宝である。またその前室にあたる左奥には板壁に沿って客座が設けられており、「天之常立神(あめのとこたちのかみ)」「宇麻志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)」「神産巣日神(かみむすびのかみ)」「高御産巣日神(たかみむすびのかみ)」「天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)」の別天津神(ことあまつかみ、天地開闢の際に現れた神々)五柱を祀る他、心御柱の近くには大国主大神の子であり牛飼神と崇められる「和加布都努志命(わかふつぬしのみこと)」を祀っている。




境内の正面には「銅鳥居」が構えられている
寛文六年(1666年)に長州藩第二代藩主の毛利綱広が寄進したものだ

 本殿は「玉垣」で囲まれ、前方には「楼門」及び「神饌所(東)」「神饌所(西)」が建つ。そのさらに外側に「瑞垣」を巡らして聖域を区画し、前方には「八足門」及び「観祭楼及び廻廊」「西廻廊」を構える。瑞垣の内側には摂社の「大神大后神社」「神魂伊能知比売神社」「神魂御子神社」「門神社(東)」「門神社(西)」が配され、瑞垣の外側にも摂社の「素鵞社」「氏社(北)」「氏社(南)」、末社の「釜社」「十九社(東)」「十九社(西)」及び「宝庫」が位置している。拝殿の正面には「銅鳥居」、その南東部には「会所」が建つ。これら出雲大社の社殿群は寛文七年(1667年)と延享元年(1744年)に造営されたものであり、計21棟1基が一括して重要文化財に指定されている。

2006年08月訪問
2008年08月再訪問
2021年08月再訪問
2022年09月再訪問




【アクセス】

・JR山陰本線「出雲市駅」から一畑バス「出雲大社、日御碕、宇竜」行きで約25分、「正門前」バス停下車、徒歩約10分。または「出雲大社連絡所」バス停下車、徒歩約5分。

【拝観情報】

・拝観料:無料。
・拝観時間:6時〜20時(正面以外は16時30分まで)。

【参考文献】

出雲大社
出雲大社本殿|国指定文化財等データベース
出雲大社のご紹介|出雲市
・講談社MOOK 国宝の旅

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