ブッダガヤの大菩提寺

ブッダガヤの大菩提寺

概要
保有国 インド
記載年 2002年
該当登録基準 (1)(2)(3)(4)(6)−文化遺産
構成資産 大菩提寺(マハーボディ寺院)
 現在のネパール南部、インドとの国境付近、 ルンビニで誕生したガウタマ・シッダールタは シャーキャ(釈迦)族の王子として何不自由なく育てられ、学問を修め、 そして16歳で従姉妹のヤショーダラー(耶輸陀羅)と結婚し、ラーフラという子をもうけた。 しかし、シッダールタ29歳の時に、あまりに大きな転機が訪れる。

 シッダールタがお供を連れて城から出た時のことである。 東の門から外出した日、シッダールタは老人を見た。 南の門から外出した日、シッダールタは病人を見た。 西の門から外出した日、シッダールタは死者を見た。 シッダールタは人生の無常を知り、大いに悩み、苦悩した。 どうすれば人生の苦しみを克服できるのか。 そしてある日、北の門から外出したシッダールタは修行に励む出家者を見た。 心の平静を求め修行する出家者の姿に、シッダールタは心が救われたような気持ちになった。 そしてシッダールタは自らもすべてを捨て出家し修行の道を歩む道を選んだ。 なお、シッダールタが出家を決意した背景には、 この四門出遊の他に母マーヤーがシッダールタの生後一週間に亡くなったことや、 シッダールタの国が周囲の敵国により脅威にさらされていたこともあるという。

 出家したシッダールタは5人の修行者と共に、6年の間様々な苦行を行った。 断食をはじめとした厳しい苦行の末、骨と皮だけに痩せこけ、 まるで死人のような形相となったシッダールタは、 苦行のみでは悟りを得ることが出来ないと理解する。 5人の修行者と別れ、衰弱した体をネーランジャー川(尼連禅河:にれんぜんが)で清めたシッダールタは、 村娘スジャータ(難陀婆羅:ナンダバラ)から乳粥の施しを受け、体力を回復した。 そしてシッダールタは心落ち着かせ、近郊のガヤー村、 ピッパラの樹(菩提樹)の下に座し、49日間の瞑想に入った。 瞑想中には、悪魔の誘惑や心の葛藤があったものの、8日目の暁の明星を見た時、 ついにその人の心の中に悟りが訪れた。シッダールタ、35歳の12月8日の事であった。 そうしてガウタマ・シッダールタは仏陀(目覚めた人の意)となったのであった。

 ここブッダガヤ(ボードガヤ)は、八大仏教聖地の最高峰であり、仏教徒最大の聖地である。 この地にマハーボディ寺院が建立されたのは紀元前3世紀。 仏教を篤く守護していたマウリヤ王朝の王、アショーカ王が建てたと言われている。 その大塔は6世紀に作られたものであるが、インドにおける仏教の衰退と共に放棄され、 現在残る52mの大塔の姿は、19世紀にイギリスが発掘、改修したものである。 敷地内には仏陀が沐浴をしたといわれる池があり、 また大塔の背後、仏陀が悟りを開いた場所には今でも菩提樹が青々と茂っている。 この菩提樹は、仏陀が瞑想を行った菩提樹の直属の子孫であると言う。

旅行情報
所在地 ビハール州 ブッダガヤ(ボードガヤ)
アクセス ガヤより乗合トラックで30分
必要見学時間 1日(周辺の寺院訪問も含む。大菩提寺のみなら2時間)
 ブッダガヤという名は日本名であり現地では通じない。 現地ではブッダガヤではなく、ボードガヤという。 ボードガヤへ行くには、まずガヤへ行くこととなる。 ガヤには列車が通っており、コルカタやバラナシなど北部の主要駅から列車がたくさん出ている。 ガヤからボードガヤへは、駅からリキシャで10分ほどのところにある ズィーラ・スクール・バススタンドから乗り合いトラック(バスは出ていない)で行く。

 ボードガヤはマハーボディ寺院を中心にして村は構成されており、 点在している各国の寺院の間にはレストランやホテルが建っている。 村中心部の広場付近にあるレストランはそれほど多くはなく、 夜には観光客でかなり混むことになるので注意したい。 なお、広場より北に入ったところにあるチベット僧院の隣にある バラックのチベットレストランでは、トゥクパやモモなどのチベット料理を食べることができる。 チベット料理は日本人の口に良く合い、インド料理に飽きていたころにはちょうど良い。

 ボードガヤの見所は、マハーボディ寺院を中心に村に点在する各国の寺院である。 マハーボディ寺院前には喜捨を求める物乞いが列をなして並び、 足を動かせない子どもがこちらに迫ってくる。 その様子にはある種のショックを覚えると共に、人間の生命力を感じさせられる。 マハーボディ寺院は信者が数多く参拝に来ており、 本殿や裏の菩提樹の前では熱心な祈りをささげる人々がいる。 当然ではあるが、拝観は信者の方々の邪魔にならないようにしたい。 なお、マハーボディ寺院を拝観するには入り口で靴を預ける必要がある。

 仏教の聖地らしく、ボードガヤには仏教にゆかりのある様々な国の寺院が立ち並ぶ。 メインの通りに建つ中国寺やタイ僧院の他に、 村には正覚山釈迦堂や印度山日本寺などの日本寺もある。 正覚山釈迦堂には巨大な大仏があり、ボードガヤを訪れる人々の注目を集める。 また、印度山日本寺には常に日本人の僧侶が常駐しており、 朝(夏季:5時、冬季:6時)と夕方(17時)には座禅の講習会が行われ、 これには観光客も自由に参加することができる。 この座禅講習会は日本人のみならず欧米人にも人気があり、 鐘の鳴る頃には様々な人々がこの寺を訪れる。

ボードガヤからネーランジャー川の橋を渡った先には、 仏陀に乳粥を施したスジャータゆかりの村、セーナー村がある。 セーナー村の奥の田園の中には、スジャータを祀った祠やヒンドゥー寺院が点在している。 小さいながらも近代的な建物が並ぶボードガヤとは違い、 セーナー村は狭い路地に牛糞を干した土壁が並ぶような典型的な田舎の集落。 狭い路地が入り組んだセーナー村ではややスラムのような雰囲気がある。 子どもたちが道案内をしてくれるが最終的には案内料を請求されるので注意したい。 集落を超えると美しい緑色の田園風景が目前に広がる。 祠やヒンドゥー寺院よりも、この景色を見るために訪れたい。 ただし、セーナー村は本当に何もない村であり、最低でも水はボードガヤから持ってくる必要がある。

(2005年2月 訪問)

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