世界遺産登録基準

 世界遺産リストに記載されるには、以下の登録基準(criteria)のうち一つ以上を満たしていると世界遺産委員会で評価されなければなりません。

(1)人類の創造的才能を表す傑作であること。

(2)ある期間、あるいはある文化圏において、建築、技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重大な影響を与えた、人類の価値交流を示していること。

(3)現存する、または既に消滅した文化的伝統や文明に関する独特な、もしくは稀な証拠を示していること。

(4)人類の歴史における重要な段階を示す建築様式、あるいは建築的または技術的な集合体、あるいは景観を代表する顕著な例であること。

(5)ある文化(または複数の文化)を特徴付ける人類の伝統的な土地利用、海上利用の顕著な例であること。あるいは人類と環境との関わりを示す顕著な例であること。特に、不可逆的な時代の変化によりその存続が危ぶまれているもの。

(6)顕著で普遍的な価値を有する出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的に関連があること(この基準は他の基準と併せて用いられるのが望ましい)。

(7)類稀なる自然美、および美的価値を有した最上級の自然現象、あるいは地域を含むこと。

(8)生命進化の記録、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的もくしは自然地理学的特徴を含む、地球の歴史の主要な段階を示す顕著な例であること。

(9)陸上、淡水域、沿岸、海洋の生態系や動植物群の進化発展における、重要な進行中の生態学的、生物学的過程を示す顕著な例であること。

(10)学術的または保全上、顕著な普遍的価値を有する絶滅危惧種を含む、生物多様性の保全の為に最も重要な自然の生息地を含むこと。

 これらのうち(1)から(6)が文化遺産の登録基準、(7)から(10)が自然遺産の登録基準です。文化遺産の登録基準と自然遺産の登録基準を一つ以上ずつ含むものが複合遺産となります。

 なお、近年は(6)単体、(7)単体での世界遺産リスト記載例は無く、これらは他の登録基準と併せて用いられるのが通常です。

 また、1992年からは「文化的景観」という概念が導入されています。文化的景観は人間と自然の相互作用により作られた景観を示すもので、文化遺産の一種ではありますが、これは他の文化遺産登録基準(主に4や5)が適用された上で付随するものであり、登録基準ではありません。



 なお、世界遺産に推薦される物件は、いずれの登録基準が適用されるにせよ、その前提条件として以下の項目が満たされていなければなりません。

適切な保護管理体制

 長期的な管理計画、およびその国の国内法における適切な保護措置が取られていること。バッファゾーンが適切に設定されていること。

真正性(authenticity)

 文化遺産において、それが本物であること。デザインや材料、工法、立地がオリジナルであること(修復されたものの場合、オリジナルに準拠していること)。

完全性(integrity)

 物件の価値を構成するに十分な要素が含まれていること。また構成資産に対する人為的影響が少なくてはならず、それを防ぐに十分な範囲を含むこと(特に自然遺産で重視されています)。

不動産であること

 「世界遺産条約」は不動産のみを対象とします。よって列車や船、動物などは動産とみなされ対象外ですが、土台に据え付けられるなどした(容易に動かす事のできない)像や碑などは不動産とみなされ対象となります。

 なお、「世界遺産条約」と並ぶUNESCO三大遺産事業の一つである「無形文化遺産保護条約」では伝統芸能、伝統技術、祭りや習慣といった無形の文化伝統を扱っており、また同じくUNESCO三大遺産事業の一つ「世界の記憶(通称、世界記憶遺産)」では書物や碑文、記録などを扱っています。