概要 | |
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保有国 | バングラデシュ人民共和国 |
記載年 | 1985年 |
該当登録基準 | (4)−文化遺産 |
構成資産 |
シャイト・ゴンブズ・モスジット , シンガー・モスジット , ナイン・ドーム・モスジット などのモスク群 ハーン・ジャハン廟(聖者廟) |
バングラデシュはイスラーム教国である。
1201年、今のバングラデシュおよびインドの西ベンガル州、
いわゆるベンガル地方を支配していたヒンドゥー教王朝のセーナ朝が、
西方からのイスラーム教勢力に侵略され、
イスラーム王朝によるベンガル地方の支配が始まった。
直後、インドのデリーに打ち立てられたデリー・サルタナット朝により、
南アジア一帯はイスラームにより統治されたが、
14世紀にはデリー・サルタナット朝が衰退し、
代わりに各地でイスラーム教徒による独立政権が生まれた。
ベンガル地方にも新たにイリヤース・シャーヒー朝が立ち、
その王朝のもと、ベンガルでは都市整備が進められた。 バゲルハットは、その都市整備の流れを汲む15世紀の前半、 イスラーム教の王「ハーン・ジャハン」が 当時大湿地帯であったこの地を開拓し作り上げたモスク都市だ。 カン・ジャハンはこの地に360のモスク、360の池、 360の聖者廟を作ったという伝説が残っている。 その真偽は定かではないが、現在でもバゲルハットにはいくつかのモスクが残っており、 また、ヤシの木に覆われたジャングルの中にも 数多くのモスクが眠っているであろうと言われている。 なお、バゲルハットに残るモスクは、ハーン・ジャハン様式と呼ばれる ここでしか見られない独特ものである。 全体的に扁平で高さはないものの、一つもしくは複数のドームを持ち、 祈りの声をモスク内に響き渡せるような構造をしている。 ハーン・ジャハンは、その死後は聖者としてムスリムの信仰を集めている。 バゲルハットには彼の聖者廟があり、それはバングラデシュ内において、 シレットという街ののシャハ・ジャラル廟と二分するほどの人気を持ち、 今もなお参拝する信者が絶えることがない。 聖者廟とは、その名の通りイスラームにおける聖者の墓である。 モスクがアッラーへ祈りを捧げる聖なる礼拝堂なのに対し、 聖者廟は庶民が霊験あらたかな聖者に現世利益を求める願掛けの場だ。 一般的にモスクは男性しか立ち入ることは許されないが、 この聖者廟はそのような分け隔てなく、どのような人であっても自由に参拝することができる。 バングラデシュではこの聖者信仰が非常に盛んな国である。 元来、仏教やヒンドゥー教の土台があったこの地においてイスラームが普及したのも、 聖者という具体的な信仰対象があった為なのだろう。 |
旅行情報 | |
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所在地 | クルナ管区 バゲルハット |
アクセス | クルナのルプシャ・ガット・バスターミナルよりバスで1時間 |
必要見学時間 | 1日 |
バゲルハットへは、クルナの街の外れにある、
ルプシャ・ガットからフェリーで渡ったところにあるバスターミナルからバスで行く。
クルナ中心部からルプシャ・ガットへはリキシャで10分程度。
川を渡るフェリーは無料である。
バゲルハットのモスク群は、バゲルハットの町から少し手前の場所にあるため、
車掌に「シャイト・ゴンブス・モスジッド」と言っておくと良い。
そうすれば、モスク群のエリアで下ろしてくれる。 バゲルハットのモスク群は遺跡ではない。 現在でも数多くのムスリムが、一日五回の祈りを行っている現役のモスクである。 以前はこれらのモスクは、たとえ外国人であっても女性の立ち入りは厳禁であった。 世界遺産リストに記載された現在は、 観光客であれば女性の立ち入りも許されるようになっている。 見学の際には、当然ではあるが見学の際にはマナーをしっかり守り、 祈りを行っている人々の迷惑にならないようにしなければならない。 男女共に肌の露出は極力避け、静かに見学すること。 女性は手足はもちろん、頭もスカーフをかぶって隠さねばならず、 男性も短パンやノースリーブのような肌が見える服装は厳禁である。 バゲルハットのモスク群は、おおよそ4〜5km四方の、比較的広いエリアに点在している。 これらはシャイト・ゴンブス・モスジッドを中心としたゴラ池付近のエリアと、 ハーン・ジャハン廟を中心としたタクル池付近の二つのエリアに分けることができる。 それぞれのエリア内であれば徒歩で回ることができるが、 これら二つのエリア間の移動はリキシャなどを使うことになる。 シャイト・ゴンブス・モスジッドやハーン・ジャハン廟など、 バゲルハットの中心であるモスクは容易に見つけることができるが、 それぞれを取り巻く細かなモスクは、割と見つけにくい場所にあることがある。 なお、ダッカとクルナ間の移動は、 ロケット・スチーマーと呼ばれる外輪船を利用することをオススメしたい。 外輪船とはスクリューはなく外輪(パドル)という水車のようなもので進む、 極めてオールドスタイルな船である。 現在、交通手段として使われている外輪船はここだけとも言われている。 バングラデシュで動いているこのロケット・スチーマーは、 70年以上も前に作られた船である。 残念ながら現在はディーゼルエンジンになっているものの、 1996年までは蒸気機関で動いていたという。 なお、ダッカからクルナまでは35〜40時間と極めてスローペースなので、 時間的な余裕がない場合には注意が必要である。 (2005年3月 訪問)
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写真 | |
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