概要 | |
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保有国 | 中華人民共和国 |
記載年 | 1987年 |
該当登録基準 | (3)(6)−文化遺産 |
構成資産 |
周口店村にある北京原人遺跡 |
北京市南西部の周口店村にある龍骨山は、漢方薬の原料となる動物の骨が採れる山として昔から知られていた。龍骨山に化石が多く埋まっていることを知ったスウェーデンの地質学者ヨハン・アンダーソンは、1921年から1923年にかけてこの地で発掘を行った。その後の1926年、発掘で発見した動物の化石を整理、調査したところ、その中に人類のものと思わしき臼歯が混じっているのを発見する。これにより本格的な周口店の発掘調査が始まり、そしてその3年後の1929年、中国人考古学者の裴文中(はい・ぶんちゅう/ペイ・ウェンジョン)によりほぼ完全な頭蓋骨が発掘され、周口店の名は世界に轟くこととなった。 その頭蓋骨は北京原人(ホモ・エレクトス・ペキネンシス)のものとされた。北京原人はアフリカ起源の原人ではあるものの、我々人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)の祖先ではない。北京原人はインドネシアのジャワ島で発見されたジャワ原人(ホモ・エレクトス・エレクトス)同様ヒト科ヒト属ホモ・エレクトスの亜種であり、つまりヒトとは別種の旧人類なのである。北京原人の生息時期は50万年前から20万年ごろと考えられており、ジャワ原人同様何らかの原因で絶滅したとされる。 周口店の北京原人遺跡からは歯や頭蓋骨の他にも様々な部位の骨が発見されている。また原人の骨以外にも97種類ものの哺乳類の骨や、一万点以上の石器が発見されており、北京原人の特徴や生活を知る手がかりとなっている。北京原人の特徴として、まず顔は頬骨が高く、眉の下の骨が出っ張っており、鼻骨が広くて鼻の下が長い。額は後ろに下がっており、頭の形は平らである。現代の人類より頭蓋骨が厚く、脳の容積はヒトの8割ほど。身長は150cm前後で直立歩行をし、洞穴の中で集団生活をしていた。炉の跡が発見されていることから火を使っていたとされ、鹿肉などを焼いて食していたとみられる。また、砕かれた人骨も見つかっていることから、食人を行っていたという説もある。 北京原人が発見されたのは龍骨山の中腹にある猿人洞であるが、1933年には山頂付近にある山頂洞からは人類の祖先にあたる新人(化石現生人類)の骨が見つかっている。発見された骨は、3つの完全な頭蓋骨を含む老若男女7体分であった。山頂洞人と呼ばれるこれらの骨は、1万8000年ほど前の後期旧石器時代のものである。その姿や脳の容量は、既に現在の人類とほぼ同じであった。山頂洞からは他にも動物の骨で作られた針や貝殻を磨いて作られた装飾品などが出土しており、この頃には既により高度な道具の使用法や美の観念を身に着けていたということが分かる。 このように、龍骨山からは北京原人や山頂洞人など数多くの化石人類の骨が見つかったのだが、発掘された骨が全部現在に残っているかといえば、残念ながらそうではない。1937年に盧溝橋事件が起き日中戦争が勃発すると、裴文中ら研究者は発掘された骨が日本軍に没収されることを恐れ、アメリカへ送ろうとした。しかし輸送の途中で戦乱に巻き込まれ、北京原人の頭蓋骨5つや山頂洞人の頭蓋骨などが行方不明となってしまった。それらは現在にも見つかってはないのである。なお、発掘は戦後にも行われ、北京原人の頭蓋骨一つなどが新たに発見されている。 |
旅行情報 | |
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所在地 | デリー |
アクセス | 北京の天橋バスターミナルより1時間30分 |
必要見学時間 | 2〜3時間 |
北京原人遺跡のある周口店村は、北京中心部より南西に50kmほど行ったところにある。北京からは、天壇公園の西側にある天橋バスターミナルから出ている917路バスの本線(917路には支線が多く存在する)が周口店を経由するのでこれを使う。周口店のバス停から北京原人遺跡までは少々距離があり、歩くと30分ほどかかる。遺跡方面へ向かう路線バスもあるので、これを使えば10分ほどで行くことができる。周口店バス停から遺跡公園までは一本の道路が通じており、標識も出ているので迷うことはないだろう。 北京原人遺跡は龍骨山という丘全体であり、いくつかの発掘現場を見学することができる。発掘現場は龍骨山の中腹から山頂にかけて点在しており、それらを見学するためには当然ながら山を登る必要がある。道は舗装されていて歩きやすいが、斜面は急なので思った以上に体力を消耗するかもしれない。遺跡の周辺に店などはほとんどなく遺跡の駐車場に小さな売店があるくらいなので、飲み物や軽食くらいは北京から持参していった方が良いだろう。 遺跡はまず一番初めに北京原人の骨が発見された猿人洞(第一地点)から始まる。遺跡の入口から急な坂道を少し登り、左手に伸びる細い切通しの道を歩いていくと突然開けた場所に出る。そこが猿人洞である。猿人洞では13層にもなる角礫岩や灰の層がむき出しとなっており、龍骨山の地層がよく分かるようになっている。また北京原人の骨が発見された場所にはその旨を記したプレートが掲げられているが、草が茂っており少々分かりづらいかもしれない。猿人洞を超えさらに進んでいくと、鳩の洞窟と呼ばれる洞窟に繋がる。ここは北京原人の使用した石器が多数発掘された場所であるという。 猿人洞や鳩の洞窟の他にも、山頂洞人の骨が発掘された山頂洞、第二地点、第三地点、第四地点、第12地点、第15地点といった発掘現場を見学することができる。基本は洞窟の外観しか見ることができないが、第四地点は内部にも入ることができ、洞窟内部の様子を見学することができる。また遺跡内には展望台も設けられており、周口店村の様子を眺めることもできる。急激な発展を見せる北京中心部とは違い、ここではのんびりとした郊外の村の様子を楽しみたい。 遺跡内には北京原人遺跡博物館もあり、そこでは出土品や北京原人の頭蓋骨のレプリカなどが展示されてる。結構広く、展示物も多いのでじっくり見ると一時間はかかるだろう。展示物は本物ではなくレプリカが多いが、北京原人の特徴や生活の様子を知ることは十分できる。博物館の裏手にはメモリアルガーデンと呼ばれる墓地があり、北京原人に関わった研究者がここに眠っているという。 (2007年8月 訪問)
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