暫定リスト

 暫定リストとは、5年から10年以内に世界遺産へ推薦される予定の、いわば世界遺産候補物件の一覧表です。

 各国政府はまず、世界遺産登録基準を考慮して選んだ候補物件の一覧をUNESCOに提出し、暫定リストに記載してもらいます。その後、推薦準備が整った物件の本推薦がなされ、各専門機関による評価後、世界遺産委員会にて審議されます。

 世界遺産に本推薦される物件は、暫定リストに記載されていなければなりません。ただし、地震などといった天災、戦争や内戦といった人災など、不測の事態に陥ったものに関しては、「緊急登録推薦」として暫定リストに記載されていなくても例外的に推薦が可能です。

 暫定リストには、推薦予定物件の「名称」「位置」「概要」、および「普遍的価値のある理由」が記載されており、それらはUNESCOの世界遺産サイトにて公表されています。http://whc.unesco.org/en/tentativelists/(英文)



 暫定リストに記載されている日本の世界遺産候補物件は、以下の通りです(2012年7月現在)。

物件名 [暫定リスト記載年](カテゴリ)

武家の古都鎌倉 [1992年](文化)
彦根城 [1992年](文化)
富岡製糸場と絹産業遺産群 [2007年](文化)
富士山 [2007年](文化)
飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群 [2007年](文化)
長崎の教会群とキリスト教関連遺産 [2007年](文化)
国立西洋美術館本館 [2007年](文化)
北海道・北東北の縄文遺跡群 [2009年](文化)
九州・山口の近代化産業遺産群 [2009年](文化)
宗像・沖ノ島と関連遺産群 [2009年](文化)
金を中心とする佐渡鉱山の遺跡群 [2010年](文化)
百舌鳥・古市古墳群 [2010年](文化)

 このうち、「武家の古都鎌倉」と「富士山」は、2012年1月に本推薦がなされ、2012年夏にICOMOSの現地調査を経て、2013年の世界遺産審議会で世界遺産リスト記載の可否が審議される予定です。

 また、「富岡製糸場と絹産業遺産群」と「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の推薦準備も進んでおり、2013年に「富岡製糸場と絹産業遺産群」が、2014年には「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が推薦される見込みです。



 現在、日本の暫定リストには自然遺産の候補が一つも掲載されていませんが、2003年に行われた「世界自然遺産候補地に関する検討会」において「知床」「小笠原諸島」「琉球諸島」の三件が最終候補に挙がり、このうち「知床」は2005年、「小笠原諸島」は2011年に世界遺産リストへ記載されました。

 残る「琉球諸島」についても、暫定リストへの記載が内定しており、現在はその構成資産である「奄美群島」および「やんばる」の国立公園化へ向けた検討、調査が進められています。