南砺市相倉

―南砺市相倉―
なんとしあいのくら

富山県南砺市
重要伝統的建造物群保存地区 1994年選定 約18.0ヘクタール


 富山の南西部に位置する山間部。そこは利賀谷、小谷、下梨谷、上梨谷、赤尾谷の5つの谷間から成る地、五箇山がある。もとは平家の落人が人目を避けて住み着いたとされるこの地には、雪深い気候に対応した合掌造りという独特な形式の家屋を見ることができる。下梨谷を少し上がった所にある相倉集落もまた、そのような合掌造り建築が建ち並ぶ集落だ。




相倉集落全体図

 合掌造り家屋最大の特徴とも言える急勾配の屋根は、屋根に雪を積もらせない為の工夫である。また、その急勾配がもたらす複数層の屋根裏部屋は、大家族で住まうことを可能とし、同時に屋内でも作業ができる広いスペースを確保することができる。この地域では一軒の家屋に大家族で住まう習慣があるのだが、それは屋内で仕事をするための労働力を確保するということ共に、山間の限られた耕作地を分家によって分与することを防ぐという意味合いもある。




懐かしさを感じる光景が広がる

 近世、五箇山は加賀藩の所轄地であった。加賀藩は五箇山の各集落を篤く保護、人目に付かぬその土地で、養蚕、塩硝、和紙作りなどを行わせていた。もちろん、相倉集落も例外ではない。合掌造り家屋の2階以上では、広い屋根裏を有効活用して養蚕を行い、1階の囲炉裏下では塩硝を発酵させ、また広い土間では和紙すきが行われていた。




相倉のメインロード

 五箇山は民謡の宝庫と呼ばれるほど多くの民謡が伝承されてきたことでも知られている。五箇山で生まれた日本最古の民謡「こきりこ節」や、落ち延びた平家の悲哀を唄った「麦や節」は国の無形文化財にも指定されている。また、かつて五箇山には「まいまい」と呼ばれる歌垣(うたがき/特定の日に男女が集まり歌を掛け合う。今も中国南部や東南アジアで行われている)の習慣もあった。




左の小屋は原始合掌造りである

 相倉の中心部には、原始合掌造りの小屋が残されている。まるで竪穴式住宅のようなこの小屋は、通常の合掌造り家屋と比べ1階部分が無く、屋根が地面に付く形をしている。現在は物置として使われているものの、江戸時代にはこのような小屋を家屋として用いており、それゆえこの形状の家屋を合掌造り家屋の原型とする説がある。




相倉の棚田

 また、相倉では見事な石垣で仕切られた棚田を見ることができる。これらの棚田はかつては養蚕のための桑畑であったが、絹の需要の減少により養蚕は行われなくなり、1950年頃から棚田に転作された。これらの棚田は、合掌造り家屋と相まって美しい景観を構成しており、その石垣や水路もまた環境物件として保護の対象となっている。

2007年07月訪問




【アクセス】

JR北陸本線「高岡駅」より加越能バス「白川郷行き」で約2時間分、「相倉口バス停」下車、徒歩約5分。

【拝観情報】

民宿の宿泊者でない限り、集落への立ち入りは8:00から日没まで。
散策では住民の迷惑にならないように。

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