高岡市金屋町

―高岡市金屋町―
たかおかしかなやまち

富山県高岡市
重要伝統的建造物群保存地区 2012年選定 約6.4ヘクタール


 江戸時代初期に開かれ、近世から近代にかけて商業の町として発展した高岡は、銅器で有名な鋳造業の町でもある。高岡で生産される銅器は生産額で約95%のシェアを占めるといい、戦後には海外にも数多く輸出されていた。その高岡銅器のルーツが、千保川の西岸沿い広がる金屋町である。金屋町は銅器の鋳造を行う鋳物師(いもじ)の町であり、金屋町通りに沿って江戸時代から昭和初期にかけての町家が建ち並んでいる。それらはいずれも意匠に優れ、また敷地の裏手には土蔵と鋳造の作業場が備わっており、鋳物師町としての特色ある町並みを残すものとして、高岡では土蔵造り商家の町並みが残る山町筋に続き二例目の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。




金屋町通りには銅片が散りばめられた石畳が敷かれている

 加賀藩二代藩主の前田利長(まえだとしなが)は、慶長14年(1609年)に自身の隠居所として高岡城を築城し、高岡の町を開いた。その直後の慶長16年(1611年)、利長は城下町の産業を振興すべく近隣の砺波郡西部金屋(にしぶかなや)から七人の鋳物師を招き、東西50間(約90メートル)、南北100間(約180メートル)の土地を与えて鋳物師町を形成した。鋳造という火を扱う生業の為、その立地は城下町の西を流れる千保川の対岸とし、火災が起きた際にも城下町に被害が及ばないようにした。金屋町はその拝領地を骨格として成立した町であり、東西約140メートル、南北約450メートルの範囲が重要伝統建造物群保存地区に選定されている。




高岡には銅板張りの家屋が多い

 慶長20年(1615年)の一国一城令により高岡城が廃城となり、高岡の町は一時衰退したものの、加賀藩三代藩主の前田利常(まえだとしつね)は高岡を商業の町として再興すべく様々な施策を行った。金屋町の鋳物師たちは諸役を免除され、関所の通過も自由などといった優遇措置を受けつつ、鍋や釜など日用品を作っていたという。その利常の政策が功を奏し、高岡は商工業の町として多大に発展、金屋町の鋳物師たちは地元の需要に答えつつ多彩な金物を生産するようになり、江戸時代中期には鋳物師の数が日本一になったという。なお、当初は鉄器の生産がメインであり、銅器を生産するようになったのは江戸時代後期、天保から弘化にかけて(1830〜1847年)の頃であるという。




町のあちらこちらに地蔵尊が祀られている

 金屋町では隣接する千保川の水運を利用し、金物の原料となる鉄や銅、燃料となる薪や炭をそれぞれの鋳造所に搬入していた。町の地割は間口が狭く奥行きが深い短冊状であり、通りに面して主屋が建てられている事から、一見すると普通の町家が建ち並ぶ地区であるかのように見える。主屋の背後には中庭を挟んで土蔵を置き、さらにその奥に鋳造の作業場を設けている。土蔵には土戸と呼ばれる防火扉が備わり、万が一作業場から火が出た場合にはその土戸を閉めて開口部を塞ぎ、主屋への延焼を防いでいたのである。中庭もまた火除けの緩衝地帯としての機能を有するなど、できるだけ火災が広がらないようにした工夫を見る事ができる。




千本格子や大戸の木目が美しい

 金屋町の主屋は切妻造りの平入りで桟瓦葺き、柱や貫などの木部を残してつつ白漆喰で仕上げた真壁造りを基本とする。一階部分には「マサノコ」と呼ばれる繊細な千本格子をはめ、特に古いものでは蔀戸を吊っている。出入り口は大戸とするのが普通であるが、現在は引き戸に改修されているものが多い。また二階部分の両端には袖壁を設けるなど、その意匠は金沢などに見られる町家と共通した部分が多いものの、銅の飾り細工が鋳物師町らしさを演出している。金屋町の最盛期には一戸の町家を奥行き半分に仕切り、二世帯が暮らす「アイヤ」として使っていたという。主屋の裏手に位置する土蔵は二階建ての切妻造り桟瓦葺きを基本とし、平入りと妻入りのものが混在している。




敷地の裏手には鋳造所が建つ

 藩政時代が終わり明治時代に入ると、職を失った刀金工職人が象嵌や彫金の技術を金屋町に伝え、生産される銅器は日用品から美術工芸品へと変化していった。昭和初期、第二次世界大戦が激化すると銅が手に入らなくなった事から転業が相次いだが、代わりに軍事需要の多いアルミニウム工業が発達する。黒部川など急峻な河川を多く有する富山県は水力発電所建設の適地であり、アルミニウムを精錬するのに必要な膨大な電力を確保しやすかったのだ。戦後は仏具などの需要が復活した事により再び銅器が生産されるようになり、現在もアルミニウム工業と共に高岡を代表する産業の一つとして銅器の鋳造が続けられている。

2007年07月訪問
2012年10月再訪問




【アクセス】

JR北陸本線「高岡駅」より徒歩約20分。

JR北陸本線「高岡駅」より加越能バス「佐加野、国吉方面行き」で約5分、
「金屋町」下車すぐ。

【拝観情報】

町並み散策自由(ただし、住民の迷惑にならないように)。

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