村田町村田

―村田町村田―
むらたまちむらた

宮城県柴田郡村田町
重要伝統的建造物群保存地区 2014年選定 約7.4ヘクタール


 宮城県南部の盆地に広がる村田町は、江戸と仙台を結ぶ街道と、山形を経て日本海沿岸の酒田へと至る街道の分岐点という交通の要衝に位置しており、近世より仙南地方における商業の中心地として栄えた商家町である。江戸時代には仙台藩が栽培を奨励していた紅花や藍の集散地として賑わい、江戸や上方との取引で多大なる財を成した。明治時代に入ると繭を取り扱うようになり、以降も周辺地域の拠点として続いていった。その繁栄を示すかのように、南北に通る旧街道に沿って、今もなお重厚な蔵造の商家が建ち並んでいる。かつての町人地のうち、近世からの町並みの風情を残す本町と荒町、東西180メートル、南北470メートルの範囲が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。




門と店蔵が交互に並ぶ、本町の町並み

 村田町の歴史は、室町時代の嘉吉年間(1441〜1444年)に常陸国真壁郡村田庄の小山九郎業朝(おやまくろうなりとも)が伊達氏の家臣となり、村田城を築いたことに始まるとされる。江戸時代に入ってからも伊達家の家臣が領主を務め、村田城に館が置かれていた。館の東には武家地が配され、町人地はそのさらに東に築かれた。町場が形成された時期は定かではないが、遅くとも18世紀の後半には町人地として本町・荒町・南町が成立していたという。村田の商人たちは街道の結節点という地の利を活かし、江戸のみならず酒田の北前船を利用して上方とも交易を行っていた。特に紅花は京都に送られ、質の良いものは「金一匁(もんめ)紅一匁」と称されるほど高値で取り引きされたという。




店蔵は切妻屋根の平入を基本とするが、妻入のものも存在する

 各家の敷地は通りに沿って短冊形に切られており、表に面して店舗専用の建物である店を構え、その背後に居住棟である主屋を別棟として建てている。店と主屋は敷地の北側に寄せられ、敷地の南側は「アイコ」もしくは「アエコ」と呼ばれる敷地内通路となっている。この通路の入口には立派な門が構えられており、門と店蔵が交互に連続するのが村田の町並み景観の特徴である。店の規模は三間から六間幅、切妻屋根の平入を基本とし、木部を分厚く塗り篭めた店蔵(みせぐら)と呼ばれる土蔵造のものが多い。小規模なものでは塗り篭めの大壁ではあるものの壁の厚さが薄かったり、木部を塗り篭めない真壁のもの、間口が狭いところでは切妻屋根妻入とする店もある。




防火を強く意識しながらも意匠に凝った作りである

 店蔵の一階は下屋を設けて張り出し、ほぼ全面を開口して建具は雨戸仕舞もしくは引違戸とする。内部は下屋部分を土間とし、本体部分には床を張って帳場としている。土間と帳場の境には、上下にスライドして開閉する摺揚戸(すりあげど)で仕切っていた。二階部分の開口部は掛子塗り(段々をつけ、外から火が入らないように工夫した塗り方)の観音扉であり、窓の上には金属製の持ち送りで支えられた庇を設けている。一階、二階ともに腰部分に平瓦を張った海鼠壁(なまこかべ)のものが多いが、これは明治末期以降の流行だという。屋根は桟瓦葺きで、土蔵特有の置き屋根をそのまま見せるものもあれば、隙間を塗り篭めるものも存在する。




門の腕木には繰形が施され、欄間も彫刻で飾られている

 村田町に現存する店蔵はおよそ20棟。棟札や墨書などから年代が確認できる店蔵のうち、最古のものは江戸時代後期の文政5年(1822年)のものであり、最も新しいものでも大正3年(1914年)の建造である。建築様式から建立年代を推測できるものも含めると、半数以上が明治時代に建てられている。いずれも極めて耐火性に優れた作りでありながら、意匠的に優れているのが特徴である。店蔵の南側に構えられた門は腕木門形式であり、立派な木材を使用し桟瓦葺の屋根を持つ実に重厚なたたずまいである。軒を支える腕木や持ち送りには繰形(ぐりがた)の彫刻を施されており、戸口の上は欄間で飾るなど、門もまた意匠に凝ったものが多い。




敷地内通路に敷かれた石畳が独自の風情を醸す

 主屋は店の背後に一間ほど離れて建っている。店とは独立した別構造ではあるが、現状では主屋と店の間に屋根や壁を設けて部屋を作っていることが多い。土で塗り篭めた店とは異なり、主屋は木部を見せる真壁造で、屋根は切妻屋根もしくは入母屋屋根となっている。内部は三室を基本としており、店側から奥へ「チャノマ」「ナカノマ」「ザシキ」と続く。古くは平屋建てであったが、明治中期以降は本二階建てとなり、二階に座敷を構えるようになった。石畳が敷かれた敷地内通路の奥には離れ座敷、土蔵、納屋、板蔵などの付属屋が並び、裏通りに面しても付属屋や板塀が建ち、裏門が設けられている。東側の敷地裏手には背割の水路と道路が通されていたが、現在は道路が残るのみだ。

2015年10月訪問




【アクセス】

JR東北本線「大河原駅」より宮城交通バス「村田・川崎行き」で約20分、「村田中央バス停」下車すぐ。
JR東北本線「仙台駅」より宮城交通バス「高速仙台・蔵王町線」または「高速仙台・川崎町線」で約35分、「村田町役場前バス停」下車、徒歩約3分。

【拝観情報】

町並み散策自由(ただし、住民の迷惑にならないように)。

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