鹿苑寺(金閣寺)庭園

―鹿苑寺(金閣寺)庭園―
ろくおんじ(きんかくじ)ていえん

京都府京都市
特別史跡 1956年指定
特別名勝 1956年指定


 古来より北山と称される京都盆地の北西部、風光明媚な山並みを擁して建つ鹿苑寺は、一般的には金閣寺という名で知られる臨済宗相国寺派の仏教寺院である。その歴史は古く、西園寺家公経(さいおんじきんつね)が鎌倉時代の元仁元年(1224年)に建てた西園寺の山荘を元に、室町幕府第三代将軍の足利義満(あしかがよしみつ)が応永4年(1397年)に築いた北山山荘を基礎とする。北山山荘は将軍の別邸でありながら政治の中枢として機能し、また同時に文化の中心地でもあり、この時期に栄えた華麗な文化は北山文化と呼ばれている。北山山荘を受け継いで築かれた鹿苑寺の庭園は、北山文化を代表する名庭として知られており、国の特別史跡及び特別名勝に指定された。




数々の中島や石が配された鏡湖池
奥には衣笠山が見える

 応永15年(1408年)に足利義満が没した後、北山山荘は義満の遺言により禅寺へと改められ、義満の法号から鹿苑寺と名付けられた。しかし応仁元年(1467年)に勃発した応仁の乱において、西軍の陣であった鹿苑寺は戦火を被り、金閣を除くほとんどの建物が焼失してしまう。火の手を免れた金閣はその後も残り、現存する唯一の北山文化建築として旧国宝の指定を受けたが、昭和25年(1950年)の7月2日、鹿苑寺に在籍していた学僧によって放火され全焼。同じく旧国宝指定の足利義満像と共に失われてしまった。その為、現在見られる金閣は昭和30年(1955年)に再建されたものである。なお、屋根の鳳凰だけは取り外されていた為に焼失を免れ、今もなお建立当時のものが現存する。




鏡湖池の南側より金閣を眺める

 鹿苑寺の庭園は、西園寺の庭園を改修して築かれた禅宗式の池泉回遊式庭園(池泉の周囲を歩いて回る形式の庭園)である。なお、改修前の西園寺庭園は浄土式の池泉舟遊式庭園(池泉を舟で回る形式の庭園)であったと考えられている。背後にそびえる衣笠山(きぬがさやま)を借景とし、庭園の中心である鏡湖池(きょうこうち)はほぼ円形で、西側には出島が半島状に伸びている。池泉内には葦原島(あしはらじま)や淡路島、鶴島に亀島といった大小様々な中島や、明の洞庭湖から取り寄せた九山八海石、有力大名が献納した細川石や畠山石、赤松石などといった各地の名石が巧みに配されており、仏教における九山八海(くせんはっかい)の世界を表した池となっている。




鹿苑寺庭園の象徴である金閣
その名の通り、二層と三層には金箔が押されている

 鹿苑寺庭園の核を担うのは、やはり金閣であろう。金閣は正確には舎利殿といい、仏舎利(仏陀の遺骨もしくはその代用品)を納めるための建物である。三層からなる金閣のうち、二層と三層には金箔が張られ、また杮(こけら)葺き宝形造の屋根には黄金に輝く鳳凰が据えられ、金閣という名の通り眩いばかりに金色に輝く楼閣建築である。この金閣は層ごとに建築様式が異なっており、足利義満像を祀る一層目は寝殿造、岩屋観音像と四天王像を祀る二層は書院造、仏舎利を安置する三層は禅宗様の仏殿造だ。それぞれ法水院(ほっすいいん)、潮音洞(ちょうおんどう)、究竟頂(くっきょうちょう)と称されている。この多様な様式の調和も、金閣を美しく見せる重要な要素であるといえよう。




金閣の東側には舟屋が付属する

 金閣から庭園を眺めると、鶴島と亀島が並ぶその奥に鏡湖池最大の中島である葦原島を見る事ができる。葦原島は日本を表した中島であり、金閣から見たその正面には三尊仏を表す三尊石が据えられている。また三尊石の左側には、管領(将軍に次ぐ役職)を担っていた細川氏が献納した細川石が、まるで葦原島の船頭であるかのように据えられている。これは細川氏が日本の舵を取るという見立てと考えられる。また金閣の一層西側には舟を出す為の舟屋が設けられている。かつてはここから舟に乗り、和歌や管弦を楽しんだのだ。金閣の近くには夜泊石(よどまりいし)と呼ばれる石が複数浮かんでいるが、これは夜間に舟を出した際に舟を停める為の石であったという。




西園寺の頃より残る、安民沢(あんみんたく)と呼ばれる池

 鹿苑寺の庭園は鏡湖池からさらに奥へと続いていく。高台へと続く山裾の小路沿いには銀河泉や巌下水といった清水が湧き、また「滝を登った鯉は龍になる」という中国の故事を元に作られた龍門瀑の滝組も見られる。山路の傍らには、安民沢(あんみんたく)と呼ばれる池が静かに水を湛えているが、これは西園寺時代から残るとされる古池であり、その中島には西園寺家の鎮守である「白蛇の塚」の石造五輪石が祀られている。高台の上には江戸時代に建てられた夕佳亭(せっかてい)という名の数奇屋茶室が建ち、またその高台の裏手には安土桃山時代の天正年間(1573〜1592年)に戦国武将の宇喜多秀家(うきたひでいえ)が建てたと伝わる不動堂が鎮座している。

2007年02月訪問
2008年02月再訪問




【アクセス】

「京都駅」から京都市営バス101、205系統で約40分、「金閣寺道バス停」下車、徒歩約5分。

「四条河原町駅」から京都市営バス12系統で約40分、「金閣寺前バス停」下車すぐ。

「四条河原町駅」から京都市営バス205系統で約40分、「金閣寺道バス停」下車、徒歩約5分。

【拝観情報】

拝観料400円、拝観時間は9時〜17時。

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