瑞龍寺(仏殿、法堂、山門)

―瑞龍寺(仏殿、法堂、山門)―
ずいりゅうじ(ぶつでん、はっとう、さんもん)

富山県高岡市
国宝 1997年指定


 加賀藩二代藩主の前田利長(まえだとしなが)が隠居所として高岡城を築き、城下町を開いた事に始まる富山県高岡市。その市街地中心部よりやや南に鎮座する瑞龍寺は、利長が死去したその後に三代藩主の前田利常(まえだとしつね)が利長の菩提寺として創建した曹洞宗の仏教寺院である。瑞龍寺の境内には山門、仏殿、法堂が一直線上に建ち並び、また山門と仏殿を回廊で繋いで諸堂を配すという、禅宗寺院の伽藍配置いわゆる七堂伽藍をほぼそのままに残している。その貴重な江戸時代初期の禅宗伽藍を一括して保存すべく、瑞龍寺の主要建造物にあたる山門、仏殿、法堂の三棟が国宝に、それ以外の総門、禅堂、大茶堂、高廊下、回廊が重要文化財に指定されている。




伽藍の中心である瑞龍寺仏殿

 利長は死去する前年の慶長18年(1613年)、自らが金沢に創建した法円寺という寺院を高岡に移していた。翌年の慶長19年(1614年)に利長が死去すると、跡を継いだ三代藩主の前田利常はその法円寺を利長の法名である「瑞龍院」に改め、利長の菩提寺に定めたのだ。利常は加賀藩のお抱え大工である山上善右衛門嘉広(やまがみぜんえもんよしひろ)に堂宇の建立を命じ、その巧みな技術のもと約20年の歳月をかけて伽藍が整備された。以降、瑞龍院は瑞龍寺と改名し、前田家の庇護を受けて繁栄する。江戸時代後期の延享3年(1746年)には火災により山門や禅堂などを失ったものの、まもなく再建され現在も創建当時より変わらぬ伽藍の姿を目にする事ができる。




白砂に良く映える、壮大な二重門の瑞龍寺山門

 総門をくぐったその先、伽藍の中心部入口で堂々たる構えを見せているのが瑞龍寺山門である。創建当時の山門は延享の大火によって焼失しており、現在のものはかつて瑞龍寺の伽藍を築き上げた山上善右衛門嘉広の末裔によって、江戸時代後期の文政3年(1820年)に再建されたものだ。総欅(けやき)造り、三間一戸の二重門であり、脇間には金剛力士像が安置されている。屋根は杮(こけら)葺きの入母屋造りで、深い軒が印象的だ。通常、二重門は上層の屋根より下層を大きく作る事が多いのだが、瑞龍寺の山門ではその大きさがほぼ同じとなっている。これは上層の屋根に積もった雪が、下層の屋根に落ちないようにした工夫だという。




複雑な組物に圧倒される、瑞龍寺仏殿の内部

 伽藍の中心を担う仏殿は、創建当初の万治2年(1659年)に建てられた禅宗様の仏堂である。山門と同じく総欅造り、規模は桁行三間に梁間三間で、屋根は裳階(もこし)付きの一重入母屋造りである。建立当初は杮葺きであったが、程なくして鉛瓦に葺き替えられた。鉛瓦とは木製の芯に鉛の板を貼り付けたもので、通常の瓦より寒さに強く、また有事の際には溶かして鉄砲の弾に転用できるという。鉛瓦で葺かれている例は極めて少なく、現存するものではこの瑞龍寺仏殿と金沢城のみである。禅宗様の定石通り、内部は石畳の土間であり、組物は三手先や海老虹梁が密に組まれる詰組である。禅宗様は天井を板張りの鏡天井とするのが常であるが、ここでは小組格天井となっている。




仏殿の背後に建つ瑞龍寺法堂

 仏殿の背後に建つ法堂もまた創建当初から残るもので、墨書より明暦元年(1655年)に建てられた事が判明している。その規模は桁行十一間、梁間九間と非常に大きく、正面入口には向唐破風(むこうからはふ)の付いた向拝を備えている。入母屋造の屋根は建立当初杮葺きであったものの、その後に桟瓦葺となり、さらに昭和の大修理にて銅板に葺き替えられた。内部は横三室、奥行き二室の六間取り平面と、方丈の様式を踏襲している。中央奥の部屋は仏間であり、その左右が客間だ。特に左奥の部屋は床と棚、付書院を備えた書院造りとなっている。法堂の手前一間は土間であるが、これは廊下であり、そのまま回廊に接続される構造となっている。




八丁道の先に鎮座する前田利長墓所

 瑞龍寺の門前からは、八丁道と呼ばれる石畳の道が伸びている。その名の通り、八丁(約870メートル)続く参道であり、その先には前田利長の墓所が鎮座している。この前田利長墓所は、利長の三十三回忌にあたる正保3年(1646年)、瑞龍寺を創建した前田利常によって八丁道と共に作られたものだ。三重の基壇の上に墓標を置き、周囲に二重の濠を巡らした壮大な墓所であり、かつては1万坪(約33000平方メートル)の規模を有していた。これは大名個人の墓所として最大規模のものであり、有力大名の権力や墓の制度を知る重要な手がかりとして、金沢市の野田山に現存する歴代前田家の墓所と共に2009年国の史跡に指定された。

2007年07月訪問
2012年10月再訪問




【アクセス】

JR北陸本線「高岡駅」から徒歩約10分。

【拝観情報】

拝観料500円、拝観時間9時〜16時30分。

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