西明寺本堂、西明寺三重塔

―西明寺本堂―
さいみょうじほんどう
―西明寺三重塔―
さいみょうじさんじゅうのとう

滋賀県犬上郡甲良町
国宝 1952年指定


 琵琶湖の東、滋賀県と三重県を貫くように縦断する鈴鹿山脈の西山腹。湖東平野を望む位置に建つ西明寺は、同じく近江湖東平野の鈴鹿山脈西山腹に存在する金剛輪寺(こんごうりんじ)、および百済寺(ひゃくさいじ)と共に、湖東三山と称される天台宗の仏教寺院である。他の湖東三山と共に歴史を歩んできた西明寺は、伽藍構成も良く似通っており、それらと同様、山裾に境内の入口である総門を携え、石段を登った山の中腹に主要伽藍を構えている。そこには、鎌倉時代に建造された本堂と三重塔が今もなお残っており、それらは鎌倉時代における純和様の様式を極めて良く残すものとして、国宝に指定されている。




西明寺本堂へと続く参道
かつてはこの両側に堂宇が建ち並んでいた

 西明寺は、平安時代の承和元年(834年)、仁明天皇の勅願を受けて、三修上人が開いたと伝わっている。中世には比叡山の影響の下、天台宗の道場として隆盛を極め、当時は境内に300以上もの僧坊がひしめいていたという。その後、織田信長により比叡山が焼き払われると、西明寺もまた他の湖東三山と同様焼き討ちに遭い、境内は炎に包まれた。しかしながら、この時僧侶が機転を利かせ、本堂付近の建物をより激しく燃やし、さも境内全域が炎上したかのように見せかけた。しかし実際は本堂、三重塔、二天門は無事であり、見事その焼失を防ぐことができたという。江戸時代に入ると、西明寺は徳川家の庇護を受けて復興を遂げ、現在にまで存続していった。




山の中腹に建つ西明寺本堂

 石段を登り、応永14年(1407年)建造の二天門をくぐると、正面に西明寺本堂が堂々たる構えを顕にする。この本堂は瑠璃殿とも呼ばれ、建造年は鎌倉時代前期。規模は桁行七間に梁間七間で、正面に三間の向拝が付く。建造当時は桁行五間、梁間五間の五間堂であったが、後の南北朝時代に大々的に改修され、現在の七間堂になったという。屋根は一重の入母屋造で檜皮葺。正面は全面が格子の蔀戸(しとみど)になっているなど、同じく湖東三山の一つで国宝の金剛輪寺本堂と類似点が多い。内部もまた、前方3間が外陣、中ほど2間が内陣、後方2間が後陣に分かれているなど、金剛輪寺本堂と良く似た天台密教の本堂様式となっている。




右後ろより本堂を見る

 西明寺本堂は斗栱(ときょう)の間に入る中備(なかぞなえ)の蟇股(かえるまた)が特徴的である。本堂内部に見られる蟇股は枠だけの簡素な鎌倉前期のものだが、本堂外部の蟇股はやや装飾の色を帯びた意匠を持つ鎌倉中期のもの。向拝に付く蟇股はより装飾的な彫刻で飾られた室町時代初期のものと、本堂の増築年代に併せて、蟇股の時代変遷を見ることができる貴重な建築である。また、平安時代に作られた秘仏本尊の薬師如来像は、内陣に安置された厨子の中に鎮座しており、重要文化財に指定されている。その両側には脇侍の日光菩薩と月光菩薩、二天王像(重要文化財)などといった、鎌倉時代の諸仏が祀られている。




本堂と同様、典型的な和様で建てられた西明寺三重塔

 本堂の右手に位置する基壇の上には、高さ23.7メートルの三重塔がそびえている。これもまた、本堂と同様に純和様で建てられいる建築だが、時代は本堂よりやや下った鎌倉時代後期のものである。建材は全て檜であり、屋根も檜皮で葺かれている。初層は二層目、三層目に比べてやや高く、周囲には高欄の無い縁を回している。中央間は板唐戸で、脇間は連子窓。中備えの間斗束は、初層には三間全てに入っているが、二層には中央間のみで、三層には無い。また初重内部はその一面に渡り、巨勢(こせ)派の絵師によって、仏画や文様が色鮮やかに描かれている。鎌倉時代のものでこれほど状態の良い壁画は他に無く、非常に貴重である。




心字池を中心に、斜面を利用した築山を配す西明寺本坊庭園

 本堂より石段を下ったところには西明寺の本坊がある。その庭園は蓬莱庭と呼ばれ、国の名勝に指定されている。庭園が造られたのは江戸時代中期、西明寺の復興に尽力した望月友閑(もちづきゆうかん)が、作庭の名手である小堀遠州(こぼりえんしゅう)の作風を参考にして作庭したと伝えられる。鶴島や亀島を浮かべた心字池を中心として、その背後の斜面には西明寺の本尊である薬師如来、および日光菩薩、月光菩薩の三尊仏や、12神将を表した石組が配されており、幽玄なる世界を作り出している。またこの庭園には、不断桜(ふだんざくら)と呼ばれる冬桜が生えており、樹齢約250年という高齢にも関わらず、秋から春にかけて淡い可憐な花を咲かせている。

2009年06月訪問




【アクセス】

JR東海道本線「彦根駅」よりレンタサイクルで約60分。
JR東海道本線「河瀬駅」よりタクシーで約20分。
紅葉シーズンはJR東海道本線「河瀬駅」よりバスあり。

【拝観情報】

拝観料500円、拝観時間8時〜17時。

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