唐招提寺金堂、唐招提寺講堂

―唐招提寺金堂―
とうしょうだいじこんどう
国宝 1951年指定

―唐招提寺講堂―
とうしょうだいじこうどう
国宝 1952年指定

奈良県奈良市


 奈良は南都の平城京。その大内裏である平城宮から、南へ伸びる朱雀大路によって、東西に二分された西側を、現在は西ノ京と呼ぶ。その一帯には奈良時代より続く寺院が多く存在しており、唐からの帰化僧である鑑真(がんじん)によって開かれた唐招提寺もまた、西ノ京に位置する古刹、律宗の総本山である。奈良時代、平城京を中心に発達した南都六宗の一つである律宗は、僧侶が遵守すべき規範である戒律を研究し、それを実践する所に特徴のある宗派である。その唐招提寺の境内には、奈良時代に建立された金堂、および講堂を始めとする古建築が数多く残されており、また本尊の盧舎那仏(るしゃなぶつ)など見事な仏像も多く、文化財の宝庫としてその名を馳せている。




南大門越しに見る唐招提寺金堂

 飛鳥時代に仏教が伝来して以来、戒律は概念としては知られながらも、さほど重視されてはこなかった。奈良時代に入るとその重要性が知られ始めたものの、日本には授戒を行える僧侶がおらず、授戒の体制整備が急がれた。そこで興福寺の栄叡(ようえい)と普照(ふしょう)は唐へと渡り、南山律宗の継承者である鑑真に、伝戒師としての来日を要請。鑑真は5度の渡航失敗の後、来日決意より10年後の天平勝宝5年(753年)、ついに九州へと上陸を果たす。その翌年には平城京に到着し、以降鑑真は5年間東大寺に座し、天皇や僧侶400人に戒律を授けた。そして天平宝字3年(759年)、鑑真は淳仁(じゅんにん)天皇より新田部(にたべ)親王の旧宅地を下賜され、その地に戒律を学ぶ為の道場である唐招提寺を開いたのだ。




唐招提寺金堂は手前一間に壁が無く、吹き放しとしている
八本の立派な円柱が、列を成して並んでいる

 南大門より境内へと入ったその正面には、奈良時代末期に鑑真の弟子、如宝(にょほう)によって建立された金堂が、その堂々たる構えを見せる。これは奈良時代の金堂建築で現存唯一のものであり、極めて貴重な建造物である。かつては同じく西ノ京に存在する薬師寺と同様、南大門のすぐ北に中門が存在しており、それより回廊が左右に伸びて金堂に接続していたというが、その中門や回廊は地震よって失われ、そのままとなっている。この金堂はこれまで平安、鎌倉、江戸、明治と修理が行われており、また近年では2000年から2009年に渡って、解体修理が実施された。江戸期や明治期の修理においては、屋根の構造を変える改造まで行われたが、それでもなおこの金堂は、創建当時の木材が比較的良好に保たれているという。




金堂の裏手に講堂が建つ
右手に見える楼造建築は、同じく国宝の鼓楼だ

 金堂の規模は、桁行七間に梁間四間。中央間の幅が最も広く、外側に行くにつれ柱間が狭くなっているが、これは建物をより大きく見せる工夫である。柱に乗る組物は、三段に組まれた三手先(みてさき)。屋根は一重寄棟造の本瓦葺きで、大棟の左右には鴟尾(しび)が乗っている。このうち左の鴟尾は建立当時の天平時代、右の鴟尾は鎌倉時代のものであったが、経年劣化の為、平成の修理の際に新しいものへと交換されている。内部には本尊の盧舎那仏坐像(奈良時代)が中央に安置されており、その右側には薬師如来立像(平安時代)が、左側には千手観音立像(奈良時代)が祀られている(いずれも国宝)。このような三尊像は他に類が無く、元はそれぞれが単体で祀られていたと考えられる。




正面より見る唐招提寺講堂

 金堂の背後には、教義を説く為の建物である講堂が建てられている。この唐招提寺講堂は、平城宮の東朝集殿(ひがしちょうしゅうでん、儀式に出席する臣下の控え室)であったものを、平城宮改修の際に下賜され、天平宝字4年(760年)頃に唐招提寺へと移築したものであるという。朝集殿であった際は、壁がほとんど無い開放的かつ簡素な建造物で、屋根も切妻造であったというが、寺院の講堂として使用されるに伴い、壁や扉を備え付け、屋根も入母屋造に改めるなど、大幅な改修が施された。鎌倉時代の建治元年(1275年)にも大改造が行われており、既に移築前の原型は留めていないものの、平城宮の宮廷建築が残る例は他に無く、唯一現存する奈良時代の宮廷建築として非常に貴重である。




講堂は前方5間に扉が開く

 唐招提寺講堂の規模は、桁行九間に梁間四間。屋根は一重の入母屋造で、本瓦葺きである。講堂建築は柱間の尺を一定にするのが普通であるが、この講堂は両端間のみ幅が若干狭くなっている。鑑真が唐招提寺を開いた当初は金堂が無く(唐招提寺の金堂が建てられたのは、宝亀12年(781年)より後ということが木材の年代判定より判明している)、当初はこの講堂が金堂の役割を兼ねていた為と考えることができる。講堂内には鎌倉時代の弥勒仏坐像、および奈良時代の持国天立像、増長天立像が祀られている(いずれも重要文化財)。また、かつては他にも、奈良時代に作られた一木造の仏像が複数安置されていたが、今では鉄筋コンクリート造の新宝蔵に移され、その一部が季節限定で展示されている。

2006年12月訪問
2009年12月再訪問




【アクセス】

近鉄橿原線「西ノ京駅」から徒歩約10分。

【拝観情報】

拝観料600円、拝観時間8時30分〜17時。

【関連記事】

唐招提寺経蔵、唐招提寺宝蔵、唐招提寺鼓楼(国宝建造物)
興福寺東金堂(国宝建造物)
平城宮跡(特別史跡)
古都奈良の文化財(世界遺産)