教王護国寺大師堂(西院御影堂)、教王護国寺蓮花門

―教王護国寺大師堂(西院御影堂)―
きょうおうごこくじだいしどう(さいいんみえいどう)
国宝 1958年指定

―教王護国寺蓮花門―
きょうおうごこくじれんげもん
国宝 1952年指定

京都府京都市


 奈良時代から平安時代に移り、京都盆地に平安京が造営された際、その都市計画には二つの寺院の名があった。東寺(教王護国寺)と西寺である。奈良仏教勢力を政治から排除する目的があった平安京において、ただ二つ、国家鎮護の為に建造を許された官寺である。そのうち西寺は、その後の時代において廃寺となったものの、東寺は弘法大師空海の寺として人々の信仰を集め、現代にまで存続していった。その境内には数多くの歴史的建造物が鎮座しており、中心伽藍においては金堂と五重塔が国宝に指定されているが、境内の西側、大師信仰の中心地である大師堂(西院御影堂)、および本坊から壬生大路に面して構えられた蓮花門の二棟もまた、国宝に指定されている。




御影堂北側、弘法大師が祀られている前堂

 東寺は遷都直後の延暦15年(796年)、西寺は延暦16年(797年)、平安京の正門である羅城門より東西対称の位置にそれぞれ建てられた。その後の弘仁14年(823年)、嵯峨天皇は弘法大師空海に東寺を下賜し、そうして東寺は国家守護の官寺であると共に、高野山に並ぶ真言密教の根本道場となった。平安時代後期には一時期衰退の憂き目に遭ったものの、鎌倉時代前期になると、源頼朝や後白河法皇の庇護を受けていた文覚(もんがく)上人によって再興がなされ、その後は大師信仰の寺として、皇族から庶民まで幅広い信仰を集めて栄えた。一方、西寺もまた東寺と同じく平安時代後期頃より衰退したが、こちらは復興する事無くそのまま歴史より消え去っていった。




御影堂の後堂
同じ御影堂でも、前堂とはまた違った雰囲気である

 かつて空海が住居としていた東寺の西院には、大師信仰の中心地である御影堂(大師堂)が建てられている。その建物は、古くは不動堂として不動明王像が祀られていたが、鎌倉時代の天福元年(1233年)に親厳(しんごん)僧正が弘法大師坐像を祀り、以降は大師堂、あるいは御影堂と呼ばれるようになった。なお、この弘法大師坐像は鎌倉時代を代表する名仏師である運慶(うんけい)の子、康勝(こうしょう)により刻まれたもので、国宝に指定されている。当時の建物は室町時代前期の康暦元年(1379年)に火災で焼失してしまったものの、翌年の康暦2年(1380年)には再建がなされ、またその10年後にあたる明徳元年(1390年)に前堂と中門が増築され、現在に見られる姿となった。




御影堂の北西部分
渡り廊下のような中門と、後堂の縋破風(すがるはふ)が印象的だ

 御影堂は非常に複雑な構造を持つ建造物だ。康暦2年に建てられた部分である後堂は、桁行七間に、梁間四間で入母屋造。その北側に接続する前堂は、桁行四間に梁間五間で入母屋造。前堂から西に伸びる中門は、桁行二間に梁間一間で切妻造となっている。後堂の北西部分の屋根は、屋根が二段に傾斜する縋破風となっており、また同じく後堂の東側には一間の向拝が付属している。屋根は全て檜皮葺だ。このように、三棟の建造物をくっつけたかのような御影堂は、見る角度によりその表情をころころ変える。また、信仰の対象も前堂と後堂で異なり、前堂には前述の弘法大師坐像が、後堂には不動堂時代より祀られていた平安時代作成の不動明王坐像(国宝)が祀られている。




東寺西側の蓮花門
天平の様式を残しつつ、内部は組入天井である

 東寺の境内は周囲を築地塀で囲まれており、南北一ヶ所ずつ、東西二ヶ所ずつ、計6つの門が設けられている。そのうち国宝に指定されている蓮花門は、境内の西側、壬生大路と本坊を隔てる位置に存在する。数ある門の中でも美しく、バランスが取れた三間一戸の八脚門(やつあしもん)で、屋根は本瓦葺の切妻造。その建造は鎌倉時代の建久2年(1191年)、文覚上人による再興の際に建てられたものである。基本的には奈良時代からの古式を踏襲した門であるが、天井は格子の組入天井であるなど、鎌倉時代の技法も取り入られている。なお、蓮花門という名は、空海が自らの死期を悟り、高野山に戻るべくこの門から出た際に、空海の足元から蓮華が咲いたという伝説から付けられた。




妻飾りの懸魚や板蟇股など、古式の様相が垣間見れる

 蓮花門以外では、境内東北の慶賀門(けいがもん)と北端の北総門が、蓮花門と同じく鎌倉時代前期のものである。北総門より少し南の北大門、および境内東の東大門は、桃山時代末期の慶長10年(1605年)の再建。いずれも蓮花門と同様、古式を踏襲した意匠の門であり、境内を囲む築地塀と共に、平安京の雰囲気を今に伝えている。なお、東寺の正門である境内南の南大門は、三十三間堂で知られる蓮華王院(れんげおういん)の西門であったものを、明治28年(1895年)に移築したものだ。桃山時代末期の慶長6年(1601年)に建てられたもので、桃山様式ならではの装飾著しく、他の門とは趣を意にしている。以上、蓮花門以外の東寺の門は、その全てが重要文化財に指定されている。

2007年04月訪問
2010年10月再訪問




【アクセス】

「京都駅」より徒歩約15分。
近鉄京都線「東寺駅」より徒歩約5分。

【拝観情報】

拝観料500円(特別公開期間は800円)。
拝観時間は3月20日〜9月19日が8時40分〜17時30分(入場は17時まで)、9月20日〜3月19日が8時30分〜16時30分(入場は16時まで)。

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