聖地アヌラーダプラ

聖地アヌラーダプラ

概要
保有国 スリランカ民主社会主義共和国
記載年 1982年
該当登録基準 (2)(3)(6)−文化遺産
構成資産 イスルムニヤ精舎、スリー・マハー菩提樹、
ルワンウェリ・サーヤ大塔、ジェータワナ・ラーマヤ
トゥーパーラーマ大塔、アバヤギリ大塔など
 アヌラーダプラは、スリランカで一番最初に興った シンハラ人王朝の首都が置かれていた地である。 もともとアヌラーダプラ付近一帯は、 紀元前500年頃からシンハラ人の王により治められていた。 その中、紀元前377年にパンドゥカーバヤ王がアヌラーダプラを首都と定め、都市の建設を始める。 紀元前247年にはインドのアショーカ王の息子マヒンダにより仏教が伝来、 それにより当時の王デーワーナンピヤ・テッサが仏教に帰依、 アヌラーダプラは仏教文化と共に発展し、今に残る数多くの仏教施設を建立した。

 仏教文化と灌漑水利の発展により王朝は巨大なものとなっていくが、 アヌラーダプラは安泰といったわけでは決してなかった。 王朝の歴史は、南インドからの侵入者との戦いの歴史でもある。 アヌラーダプラは南インドからやってきたタミル人などのドラヴィダ系王朝の襲撃を度々受け、 その後何百年にも渡り首都の陥落及び奪還を繰り返してきた。 そして10世紀、僧侶たちの内部事情によるいざこざも相まって、 ついに王朝はアヌラーダプラを破棄、首都をポロンナルワに移すに至る。

 4000ヘクタールという広大なアヌラーダプラの聖域地区には、 数多くのダーガバ(仏塔)やそれに伴う寺院、 他にも宮殿跡、沐浴場などといった仏教遺跡が点在している。 しかし、それらは厳密には遺跡というべきではないのかもしれない。 なぜなら、この聖域に残るダーガバや寺院は、 今もなお人々の信仰の対象を集めているからだ。 だからこそ、アヌラーダプラの登録名は「聖地」と名が打ってあるのだと言えよう。

 その聖地アヌラーダプラの中心的存在なのが、スリー・マハー菩提樹。 位置的にも聖域地区の中心に存在するこの菩提樹は、 ブッダが悟りを開いたと言われているインドのボードガヤ、 その大菩提寺に生える菩提樹の分け木であると伝えられている。 なお、スリー・マハー菩提樹のすぐ北には、 アヌラーダプラで最も巨大なダーガバ、ルワンウェリ・サーヤ大塔がそびえ立つ。 紀元前2世紀に作られたこの水泡型ダーガバは、その高さが55m。 白い湾曲した形状が青い空に良く映えている。

旅行情報
所在地 アヌラーダプラ
アクセス コロンボより鉄道で6時間もしくはバスで5時間
ポロンナルワよりバスで3時間
必要見学時間 1日〜2日
 アヌラーダプラは遺跡のエリアである聖域地区、 駅がありホテルが集まる旧市街、バスターミナルのある新市街から成る。 聖域地区は南北5km、東西2kmという広いエリアであり、 遺跡はその中に散在している為、徒歩で周ることはできない。 なので、旅行者は自転車を借りるか スリーウィーラー(別名トゥクトゥク/三輪タクシー)をチャーターする必要がある。 自転車はゲストハウスで頼めば有料で貸してくれる場合が多いので、 宿泊している宿に頼んでみると良い。

 アヌラーダプラは広大な上道が入り組んでいるので非常に迷い易い。 南から北へ順番に巡っていくのが迷いにくく、効率が良いだろう。 イスルムニヤ精舎からスタートしてスリーマハー菩提樹、ルワンウェリ・サーヤ大塔周辺を巡り、 北部のアバヤギリ大塔へ抜けるコースである。 主だった遺跡を見るだけならば一日で十分だが、 細かな遺跡もくまなく見て回るとすると一日では足りないかもしれない。

 なお、アヌラーダプラはその多くの場所で帽子及び靴を脱ぐ必要がある。 頻繁に石や砂地の上を裸足で歩く事になるので、 足の裏が真っ黒になることを覚悟しておくべきである。 出っ張った石などによる怪我にも気をつけたい。 また熱い季節では石は焼け、やけどしそうなほど熱くなるのでその対策も必要である。

 アヌラーダプラの聖域地区では、日本人を含めた外国人はチケットを買う必要がある。 チケットは聖域地区にある二箇所の博物館で売っている(その周辺にチケットチェックがある)。 チケットはアヌラーダプラだけでなく スリランカの主だった遺跡を網羅できる周遊券を買うのが良い(40ドル)。 ちなみにアヌラーダプラのみのチケットは20ドル。 スリランカの世界遺産を二箇所以上周る場合は周遊券を買った方が圧倒的にお徳である。

 スリランカでは長いことシンハラ人(仏教徒)を優遇する政府と 独立を求めるタミル人(ヒンドゥー教徒)組織が対立しており、 これまでに何度か政府機関や仏教施設に対しテロ攻撃が行われている。 また、時にはタミル人が多数派を占める北部及び東部で戦闘が行われる事もある。 アヌラーダプラ周辺はシンハラ人の地域であるため比較的安全であるものの、 シンハラ人の心の拠り所であるアヌラーダプラのスリー・マハー菩提樹や ルワンウェリ・サーヤ大塔はテロ攻撃のターゲットになりうる。 それゆえこれらの施設は軍により厳重な警備がなされており、 入るにはボディチェックが必要となる。それはもちろん、外国人でも例外ではない。

(2007年6月 訪問)

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