古代都市ポロンナルワ

古代都市ポロンナルワ

概要
保有国 スリランカ民主社会主義共和国
記載年 1982年
該当登録基準 (1)(3)(6)−文化遺産
構成資産 王宮跡、寺院跡、僧院跡など(ワタダーゲ、ハタダーゲ、トゥーパーラーマ、 サトゥマハル・プラサーダ、ランコトゥ・ヴィハーラ、 キリ・ヴィハーラ、ランカティラカ、ガル・ヴィハーラなど)
 ポロンナルワは、中世シンハラ王朝の首都である。 シンハラ人の王朝は紀元前3世紀にアヌラーダプラを首都とし、仏教文化と共に発展を遂げた。 しかしながら、シンハラ王朝はインド南部の王朝による度重なる攻撃に悩まされ、 幾度となくアヌラーダプラは陥落し、その度に奪還を繰り返してきた。 そしてついに993年に南インドのチョーラ王朝にアヌラーダプラが落とされたのを機に、 僧侶たちの内部抗争も相まって、1017年、 シンハラ王朝は首都として長年続いたアヌラーダプラを放棄、 ポロンナルワへと遷都した。

 その後の1070年、ウィジャヤバーフ1世がチョーラ王朝を追放することに成功。 その孫であるパラークラマ・バーフ1世が巨大な貯水池を作り、灌漑設備を充実させた。 それにより農業が発達、その時代にポロンナルワは最も繁栄する。 王は寺院など数々の建造物を建設、ポロンナルワは仏教都市として知られるようになり、 ビルマやタイからも僧侶が訪れるようになった。 しかしながら、13世紀になると再び南インドの王朝が攻め込んでくるようになり、 シンハラ王朝はセイロン島中央部へと移動、 ポロンナルワはその後放棄され荒廃し、ジャングルへと埋もれていった。

 ポロンナルワの遺跡地区は、宮殿や寺院などといった様々な遺跡によって構成される。 その遺跡地区の南端、そこに位置する宮殿は、かつて7階建ての巨大建造物であった。 現在は3階分までしか残っていないものの、 今に残るそのレンガの構造体から当時の宮殿の高さを感じ取ることはできる。 宮殿の北にあるクワドラングルと呼ばれる矩形の寺院群は、 かつて仏歯寺(ブッダの歯を収める寺)が建っていた場所であり、 ポロンナルワにおける仏教の中心地であった。 また、クワドラングルにはタイの寺院にそっくりなサトゥマハル・プラサーダがある。 それはポロンナルワが異国と交流があった証拠に他ならない。

遺跡の中央部には巨大なダーガバ(仏塔)を持つランコトゥ・ヴィハーラがある。 このダーガバは、アヌラーダプラのルワンウェリ・サーヤ大塔を模して作られた。 そのランコトゥ・ヴィハーラの北に位置する僧院群の中には、 これまた巨大なランカティラカという寺院建築がある。 その高さは17.5m。外壁には独特な浮き彫りが残っている。 他にも、ポロンナルワにはヒンドゥー教の寺院も多く残っている。 仏教国であるシンハラ王朝の都にヒンドゥー寺院がある訳は、 南インドから迎えた王妃の為に作ったという説と、 チョーラ王朝によってポロンナルワが侵略された後に建てられたという説がある。

 また、ポロンナルワは優れた石像が残ることでも知られている。 ガル・ヴィハーラにはブッダの坐像、立像、涅槃仏の3体が存在し、独特の存在感を放っている。 また、宮殿の2kmほど南にはポトグル・ヴィハーラという寺院があるが、 その側にも立派な石像が残っている。 立派な髭を蓄え、書物を広げるその石像は、俗説ではポロンナルワを発展させた王、 パラークラマ・バーフ1世であると言われている。

旅行情報
所在地 ポロンナルワ
アクセス コロンボよりバスで6時間
アヌラーダプラよりバスで3時間
必要見学時間 1日
 ポロンナルワは、遺跡地区側の旧市街、旧市街より南に位置する新市街、 そして鉄道駅やバスターミナルがあるカドゥルウェラ地区から成るっている。 このうち旅行者は、遺跡に近くホテルやゲストハウスが揃う旧市街に滞在することとなる。 旧市街とカドゥルウェラは距離があるため、その間の移動はバスなどを利用する必要がある。 他の町からポロンナルワからやってくるバスは、 旧市街を通ってカドゥルウェラのバスターミナルへ行くため、旧市街で下車するのが良い (もっとも、旅行者の場合は車掌が気を利かせて旧市街で下ろしてくれる場合も多い)。

 遺跡を回るには自転車が良い。 自転車を借りたい場合は宿泊しているゲストハウスに相談すると良いだろう。 遺跡地区の入口は旧市街からパラークラマ・サムンドラという貯水池沿いに北へ少し行った辺りにある。 入口にはチケットチェックがあり、チケットを持っていない場合はここで支払うことになる。 ポロンナルワのチケットは20ドル。 ただし、スリランカの主だった遺跡を網羅できる周遊券(40ドル)もあるので、 ポロンナルワ以外の遺跡も回る場合は周遊券を買った方が圧倒的にお得である。

 アヌラーダプラの聖域地区は道が入り組んでいるので迷いやすいが、 ポロンナルワは南北にメインロードが通り、さほど複雑な道も無いので、 比較的スムーズに周ることができるだろう。 周る順番は、南にある宮殿から順に北上していくのが良い。 クワドラングルやランコトゥ・ヴィハーラを過ぎると、 ガル・ヴィハーラに続く休憩所に出る。さらにその北、 13世紀の壁画が今もなお残るティワンカ・ピリマゲという寺院が遺跡地区の最北端だ。

 これらの遺跡地区は旧市街北に広がっているが、 旧市街南にもポトグル・ヴィハーラという寺院ある。 有名な石像のあるこの遺跡へは、 パラークラマ・サムンドラという貯水池沿いの道を南下するのが最も分かりやすい。 この道の眺めは非常に良く、 特に夕暮れには見事に輝くパラークラマ・サムンドラの光景を見ることができる。

 スリランカでは長いことシンハラ人(仏教徒)を優遇する政府と 独立を求めるタミル人(ヒンドゥー教徒)組織が対立しており、 これまでに何度か政府機関や仏教施設に対しテロ攻撃が行われている。 また、時にはタミル人が多数派を占める北部及び東部で戦闘が行われる事もある。 ポロンナルワ周辺はシンハラ人の地域であるため観光にさほど支障はないが、 ポロンナルワより東はタミル人の多い地区となる為、現在行ってはならない。

(2007年6月 訪問)

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