古代都市シギリヤ

古代都市シギリヤ

概要
保有国 スリランカ民主社会主義共和国
記載年 1982年
該当登録基準 (2)(3)(4)−文化遺産
構成資産 シーギリヤ・ロックおよび周辺の遺跡群
 ジャングルの中、空に向かって切り立つ巨大な岩。 もともと僧侶たちが修行をする場であったこの人を寄せ付けない岩山の頂上に、 かつて宮殿を建てた者がいる。シンハラ王朝の若き王、カーシャパだ。

 5世紀、アヌラーダプラを治めていた ダートゥセーナ王は、偉大なる王であった。 南インドのタミル王朝に征服されたアヌラーダプラを奪還し、 カラーウェワと呼ばれる巨大な貯水池を作り、国は栄えた。 ダートゥセーナには二人の息子がいた。 長男のカーシャパと、その異母兄弟であったモッガラーナである。 カーシャパは恐れていた。 父親は自分ではなく弟のモッガラーナに王位を継がせるのではないかということを。 カーシャパは平民出身である側室の子であったが、 モッガラーナの母親は王族出身の人物であった。

 不安にかられたカーシャパが取った行動は、強制的に王からその王座を奪うことであった。 カーシャパは自分の父親を監禁し、その王位を剥奪し王となる。 そしてモッガラーナは国を追放され南インドへと亡命した。 その後、カーシャパは父親のダートゥセーナに財産を全て渡すように要求したが、 ダートゥセーナはその要求に応じず、 自らが建設した貯水池カラーウェワを指差して「これが私の全財産だ」と言った。 カーシャパは激怒した挙句、家臣に命じ、ダートゥセーナを殺害させてしまう。

 カーシャパは王にはなったものの、追放した弟の報復に恐怖を抱いていた。 そしてカーシャパは7年もの月日をかけてシーギリヤの巨大な岩山の上に宮殿を建設。 アヌラーダプラからシーギリヤへと都を移し、政治を執った。 しかし、強引に奪った政権は長く続かない。 シーギリヤに遷都したその11年後、弟のモッガラーナが兵を率いてカーシャパを討ちにきた。 カーシャパは象に乗って出撃するが、その象が沼にはまって孤立。自ら首を掻ききって絶命した。 モッガラーナはカーシャパを篤く葬った後、シーギリヤを僧侶へ寄贈。 首都は再びアヌラーダプラに戻され、シーギリヤは都としての短い歴史を閉じるに至った。

 現在、シーギリヤの名を有名にしたのは、 シーギリヤ・レディと呼ばれる美女の壁画である。 シーギリヤ・ロックの中腹に描かれたこれらの美女絵は、 スリランカの古代美術を代表する作品として知られている。 これは父親を殺害してしまったカーシャパが、 その魂を慰めるためにシーギリヤ・ロック中に描かせたものと伝えられる。 現在は18人分の絵しか残っていないが、当時は500人を超える美女絵があったという。

 他にも、シーギリヤ・ロックには様々な遺構が残されている。 シーギリヤ・レディの下にはミラー・ウォールと呼ばれる人工の壁がある。 ミラー・ウォールはその名の通り、ピカピカに磨かれ鏡のように人の姿が映ったという壁だ。 現在もなお光沢があり、その前を通る人物の影が映るのを見ることができる。 ミラー・ウォールの先、宮殿へ続く階段の前には巨大なライオンの足がある。 現在は足しか残ってないが、作られた当時はライオンの顔もあり、 宮殿へ登る者はライオンの喉へ飲み込まれていくように見えたという。 シーギリヤという名は、シン(ライオン)ギリヤ(喉)がなまったという説もあるくらいだ。 その先、シーギリヤ・ロックの頂上には、カーシャパがいた宮殿の跡がある。 風が吹きすさぶこの王宮跡には、雨水を蓄えた人工池も作られている。

旅行情報
所在地 シーギリヤ
アクセス ダンブッラよりバスで1時間30分
必要見学時間 半日
 シーギリヤの見所は、当然ながらシーギリヤ・ロックである。 その巨大な岩山は、シーギリヤへのバスの中からも望むことができる。 シーギリヤ・ロックの入口からまっすぐ進むと、 その両脇には水路や噴水、沐浴場がある。 さらにそこをしばらく直進すると、シーギリヤ・ロックへ登る階段が始まる。 そこから頂上までの階段は1200段。かなり急勾配なので気をつけて登りたい。

 シーギリヤ・レディの壁画群には、石階段を上り、さらに螺旋階段を上るとたどり着く。 日よけの覆いが被せられておりやや薄暗いが、フラッシュを使用しての撮影はNG。 なお、壁画の側には係員がいる。 場合によってはその係員が普段は立ち入られない場所の壁画を案内してくれるかもしれない。 ただし、その場合はいくらかのチップを要求される。

 岩山の頂上はかなり強い風が吹く。 帽子など飛ばされやすいものは注意しなければならない。頂上からの眺めは極めて壮観。 付近の貯水池やジャングル、果ては水平線までを見渡すことができる。 ただし、日差しを遮るものは一本の木しかないため、日差しが強いときは辛い。 登る最中も汗をかく事は必至なので、水は必ず持参すること。

 シーギリヤ・ロックのみならず、その付近にも見所は多い。 ミラー・ウォールを抜けた先から見える亀裂のある大岩は、 侵入者に向け転がすために備えた兵器としての岩だ。 また、シーギリヤ・ロック付近に残る岩窟には壁画の痕が見られるものもある。 これはかつてシーギリヤ・レディのような壁画が描かれていたが、 王朝がアヌラーダプラへ戻った後、寺院として利用する際に修行の妨げとして削られた痕なのである。 他にも、象の形をした岩や、コブラの形をした岩など、ぜひ見ておきたいものも多くある。

 シーギリヤは小さな町である。 シーギリヤ・ロックの周辺にはいくらかのレストランやホテルしかない。 シーギリヤ・ロックの出口にも商店はあるが、 普通の商店と比べ物にならないほど高いので、できれば外で買う方が良いだろう。 宿泊施設も十分ではないため、宿を探すならばダンブッラの方が良い。

(2007年6月 訪問)

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