概要 | |
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保有国 | インド |
記載年 | 1983年 |
該当登録基準 | (1)(2)(3)(6)−文化遺産 |
構成資産 |
石窟群(第1窟〜第30窟)および石窟内彫刻,壁画
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アジャンター石窟群は、岩山に掘られた洞窟状の石窟に、
状態の良い壁画や精巧な彫刻が数多く残されている仏教の石窟寺院群である。
ワーグラー川沿い、U字の渓谷となっている断崖に30存在するその石窟は、
前期(紀元前1世紀)のものと後期(紀元5世紀から7世紀)のものに分けることができる。
前期はまだ仏像信仰が無く、ストゥーパが信仰の対象であった頃のものであり、
石窟やストゥーパもシンプルかつ質素である。
それに対し後期のものは仏像信仰が花開き、数多くの仏教画が描かれた時期だ。
現在まで残るカラフルな壁画はこの後期に描かれたものである。
後期にもストゥーパは作られたが、前期のものより遥かに精巧な彫刻が施され、
見た目にも豪華なものになっている。 石窟は、その使用目的からヴィハーラ窟とチャイティヤ窟の二種類に分けることができる。 ヴィハーラ窟は僧侶たちが暮らしていた僧院である。 方形をした広い部屋を中心に、いくつもの小部屋が作られているのが特徴だ。 僧院の奥正面には、通常仏像が安置されている。 チャイティヤ窟はストゥーパを奉る塔院である。 石窟は奥行きのある馬蹄型をしており、天井はやや高くアーチ状をしている。 チャイティヤ窟の最も奥にはストゥーパが安置されている。 どちらの種類にせよ、もとは木造やレンガ造りであった僧院、塔院を模した作りとなっており、 これらの石窟には木造建築に見られる特徴を見ることができる。 アジャンター石窟群に残る壁画は、ブッダやその前世に関する物語が多く、 天井画は幾何学模様や草木の絵が様々な色の天然顔料で色鮮やかに描かれている。 中でも第1窟に残る壁画は最も出来が良く、保存状態も良い。 第1窟の正面右に残る「金剛手菩薩」、正面左に残る「蓮華手菩薩」はあまりに有名であり、 特にこの金剛手菩薩は日本の法隆寺の金堂に描かれた壁画のモデルとも言われている。 現在残る壁画のほとんどは後期に描かれたものであるが、 前期のチャイティア窟である第10窟には紀元前の壁画が残されている。 保護の為ガラスのケースで保護されているそれは状態があまり良くないが、 それでも人々の様子などが描かれているのが分かる。 後期の石窟が掘られた後、当時この辺りの地域を支配していたヴァーカータカ帝国が崩壊し、 それに伴いアジャンターは放棄され、その石窟寺院群はジャングルに飲み込まれ人々から忘れ去られた。 アジャンター石窟寺院群が再び日の目を見るのは19世紀初旬。 1819年4月28日、このあたりに虎刈りに来たイギリスの騎兵隊ジョン・スミスにより発見されたことによる。 今でも第10窟の柱にはこの石窟群を発見した際のジョンスミスのサインが残されており、当時の様子が偲ばれる。 |
旅行情報 | |
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所在地 | マハーシュトラ州 アジャンタ |
アクセス | アーマダバードよりバスで2時間30分 ジャルガオンよりバスで2時間 |
必要見学時間 | 1日 |
アジャンターへの拠点はエローラ石窟群同様アウランガーバードであるが、
アウランガーバードからアジャンターまではバスで3時間もかかる。
朝一番に出ればアウランガーバードから日帰りで来ることもできるが、
より時間を取りたいのであればアジャンターの最寄の町であるファルダプルで宿泊すると良いだろう。
ただ、ファルダプルの宿は高く、その割には値段と設備が見合っていないのでそれを覚悟すべきである。
また、アジャンターはアウランガーバードからジャルガオンへ行く途中にある。
アジャンター石窟群には大きな荷物も預けられるレストハウスがあるので、
アウランガーバードからジャルガオン、もしくはその逆へ移動する途中に観光することも可能である。 環境変化に弱い壁画が数多く残るアジャンター石窟群は、非常に厳格な保護対策が行われている。 アジャンターの入口から石窟のある谷までは低公害車のシャトルバスが30分おきに運行されており、 それ以外の車両は敷地内に一切入ることができない。 ゆえにどのような旅行者もアジャンター入口から石窟群まではシャトルバスで石窟まで向かうこととなる。 石窟においても、優れた壁画が残る第1窟、第2窟、第16窟、第17窟においては、 しっかりした空調設備が整えられ、決まった人数しか一度に中へ入ることができず、 中での滞在時間も最大15分までといった規則が定められている。 カメラのフラッシュは壁画に影響を与えるということで一切認められず、 壁画の撮影がしたければわずかな照明のもと行わなければならない。 たとえ故意でなくとも、フラッシュを使用してしまうと管理人やガイドにこっぴどく怒られることとなる。 なお、懐中電灯の使用は認められているため、より良く壁画が見たければ強力な懐中電灯を持ってくると良いだろう。 第10窟のジョン・スミスのサインは、中にいる管理人に尋ねれば場所を教えてくれる。 アジャンターの石窟は全部で30の石窟が存在するが、 そのうち第27窟〜第30窟には立ち入ることができない。 また、一部事務所や資材置き場になっている石窟もあり、そこにも入ることはできない。 石窟群からワーグラー川を渡った対岸には丘があり、その丘の頂上は見晴台のようになっている。 そこからは、アジャンター石窟群の全体を見渡すことができるため、石窟群を見た後に訪れると良いだろう。 アジャンター石窟群の奥にある巨大な滝も見ることができる。 ただ、この見晴台は物売りたちが集う場所でもある。 (2006年3月 訪問)
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写真 | |
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