概要 | |
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保有国 | インド |
記載年 | 1983年 |
該当登録基準 | (1)(3)(6)−文化遺産 |
構成資産 |
仏教石窟寺院:第1窟〜第12窟, ヒンドゥー教石窟寺院:第13窟〜第29窟, ジャイナ教石窟寺院:第30窟〜第34窟 |
インドには中部デカン高原を中心に数多くの石窟寺院があるが、
その中でも最も大規模な石窟寺院群がこのエローラ石窟群である。
全部で34ものの石窟寺院が、岩肌がむき出しになった岩山の崖に掘られており、
それらは作られた時代別に仏教寺院、ヒンドゥー教寺院、ジャイナ教寺院と分かれている。
異教の寺院が隣り合って作られているエローラ石窟群は、
インドにおける宗教の多様性、他宗教への寛容性を見ることができる。 エローラにおける石窟寺院において、最も古いものは5世紀から7世紀にかけて作られた仏教寺院である。 第1窟から第12窟までがこれにあたり、第10窟がストゥーパを安置するチャイティヤ窟(塔院)、 それ以外は僧侶たちが暮らし修行を行うヴィハーラ窟(僧院)という構成。 ヴィハーラ窟は方形の広間の周囲を房で囲う構成であり、チャイティヤ窟は奥行きが広くアーチ状の天井を持つといった特徴は、 エローラからおよそ100km離れた場所にある仏教石窟寺院群、 アジャンター石窟群と共通している。 なお、アジャンターに無い特徴的な石窟としては第11窟と第12窟が挙げられる。 これらは3階建てのヴィハーラとなっておりその外見はまるでアパートのようだ。 仏教寺院に続いて作られたのは、第13窟から第29窟のヒンドゥー寺院。 これらヒンドゥー寺院はインドにおいて仏教が衰退した7世紀から作られたものであり、そのすべてが神を祀る神殿である。 エローラの石窟寺院群の中でもっとも数の多いこれらのヒンドゥー寺院の中でも、 第16窟のカイラーサナータ寺院は、他に類を見ない石窟寺院の最高傑作であるといえる。 残りの第30窟から第34窟はジャイナ寺院。ジャイナ教を保護する王がこの地を治めた9世紀に作られたものだ。 他の石窟寺院と比べ巨大さはないが、その内部は緻密な彫刻に覆われており芸術性は高い。 数ある石窟の中でも、やはり第16窟カイラーサナータ寺院は桁違いの存在感を見せる。 崖を洞窟状に彫り作らた他の石窟寺院とは違い、 カイラーサナータ寺院は岩山を掘り下げ作られた巨大な寺院である。 一見するとただの石を組み上げ作られた石造寺院に見えるが、 実は一つの岩山を彫って作られた石掘り寺院であり、それはまさに一つの「彫刻」なのである。 ゆえに、カイラーサナータ寺院には石の継ぎ目が一切無い。 なお、掘り抜かれた岩山の範囲は、奥行き81m、幅47m、高さ33m。 その建設には100年以上の月日を要したと言う。 カイラーサナータ寺院が彫り始められたのは756年。 同年、ラーシュトラクータ朝王位についた王クリシュナ1世の命令によるものである。 ヒンドゥー教においてシヴァ神の住む山とされるカイラース山(須弥山)がモチーフとなっており、 実際にこの寺院に祀られているのもシヴァ神である。 建築様式のモデルは南インドのパッタダカルにあるチャルキヤ朝の寺院であり、 岩を掘り一つの巨大な彫刻寺院を作るというアイディアは これまた南インドのマハーバリプラムにある寺院「ラタ」からとったものとされる。 そのため、カイラーサナータ寺院はインド中部にありながらインド南方型の様式を持つ寺院となっている。 |
旅行情報 | |
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所在地 | マハーシュトラ州 エローラ |
アクセス | アーマダバードよりバスで1時間 |
必要見学時間 | 1日 |
エローラ石窟群はアーマダバードから30kmほどであり、バスでも1時間足らずと近い。
エローラにも一応ホテルはあるが、アーマダバードからも余裕で日帰りができる。
エローラ遺跡公園内部にはほとんど売店などは無く、
売っているジュースも値段が割高となっているので前もって公園前の売店で飲み水を多めに買っておくと良い。
なお、エローラ石窟群のうち、第16窟カイラーサナータ寺院だけは入場料を取るが、
それ以外はまったくの無料であり、自由に出入りすることができる。
なので必要に応じて遺跡公園から出て、その前に並ぶ売店やレストランで休憩することもできる。 エローラ石窟群の石窟寺院をすべてを回ろうとすると、丸一日は必要である。 第1窟から第34窟のエローラ石窟群は、南から北にかけて崖沿いに一列に並んでいるのだが、 端から端までは非常に距離があり、暑い中すべて歩いて回るには体力のある人にとっても一苦労となる。 時間の無い人や別にすべてを見なくても良いという人は、 より立派な石窟のみをかいつまんで回ることとなるだろう。 距離のある第16窟と第17窟の間や第29窟と第30窟の間は オートリキシャ(三輪タクシー)などを利用することも可能であるが、もちろん歩いて回ることも可能である。 ただし、崖伝い歩いていくと、一部道幅が狭くなっている場所があるのでそこでは注意が必要である。 なお、第16窟と第17窟の間の山には、無数の小規模な石窟が密集しており、 第16窟から道路を使わず崖沿いに第17窟方面へ進めばそれらを見ることもできる。 それらの小さな石窟群はそのほとんどがシヴァ神を祀るヒンドゥー寺院だが、 あまり保存状態は良くなく、また中にはインド人のトイレと化しているものもあり、 入った途端にすえた臭いが立ち込め非常に複雑な気分になることも多々ある。 カイラーサナータ寺院はぜひとも時間をかけて見学し、その凄さと異様さを堪能したい。 入場料を払って中から見上げるだけでもその凄さが分かるだろうが、 できれば裏山に上りそこからこの寺院を眺めたい。 カイラーサナータ寺院の全景を見下ろすことのできる裏山は、絶好の見学ポイントである。 そこまで上がる階段を登らなければならないのだが、その苦労を遥かに上回る光景が待っている。 ただ、裏山の展望ポイントには手すりなど全く無いのであまり身を乗り出さない方が良いだろう。 (2006年2月 訪問)
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