松島

―松島―
まつしま

宮城県塩釜市 七ヶ浜町 利府町 松島町 東松島市
特別名勝 1952年指定


 宮城県は仙台湾、その支湾の一つに松島湾がある。東西20km、南北20kmに広がる松島湾には、大小合わせて260もの島々が浮かび、類稀なる景観を見ることができる。その風景は天橋立、宮島と共に日本三景の一つに数えられ、松尾芭蕉など数多くの人々に親しまれてきた。これら特異な景観を持つ松島湾は、周囲の松島丘陵一帯と共に特別名勝に指定され、保護を受けている。




4つの穴に打つ波の音が鐘のように聞こえるという鐘島

 松島は丘陵地帯が沈んで水没し、山の山頂部分のみが水面に出た沈降地形である。砂岩や礫岩、凝灰岩などから成る比較的もろい地質であるため波や風などの浸食を受けやすく、奇妙な形の岩や島を数多く見ることができる。これらの島々は松によって覆われており、それゆえ松島という名が付いた。松の種類は荒れ地に強い赤松がほとんどだ。




仁王が座ったように見えることから名の付いた仁王島

 松島は景勝地として古くより人々に知られてきたが、特に松島が美しく見える四ヶ所を松島四大観と呼ぶ。これは江戸時代の仙台藩儒学者、舟山万年によって選ばれたもので、宮戸島の大高森より見る松島を「壮観」、富山の大仰寺より見る松島を「麗観」、扇谷から見る松島を「幽観」、多聞山から見る松島を「偉観」とそれぞれ定めている。




まるで屏風絵のように見える嵯峨渓の屏風岩

 松島湾の東北部、宮戸島や野蒜海岸の辺り一帯を奥松島(東松島)と呼ぶ。松島湾に浮かぶ島の中で最大の面積を持つ宮戸島の南端には、日本三大渓の一つにも数えられている嵯峨渓がある。松島の風景が女性的と言われるのに対し、波風に浸食された切り立つ崖や、荒々しい形状の奇岩が織り成す嵯峨渓の景観は、極めて男性的であると評される。




白い岩肌と緑色の松のコントラストが見事である

 また、宮戸島といった松島湾内の島やその周囲界隈には、貝塚など縄文時代から弥生時代にかけての遺跡が多数点在している。それらの遺跡からは、骨などで作られた漁具や製塩に用いられていた土器などが豊富に出土しており、松島にて漁や採集などを行っていた縄文人の生活の様子をうかがい知る貴重な史料となっている。




雄島に残る石窟群

 松島は信仰の場でもあった。平安時代に円仁が開いた延福寺の後継である瑞巌寺をはじめ、五大堂や雄島など、松島周辺では数々の信仰の痕跡を見ることができる。特に瑞巌寺の僧侶が修行を行っていた雄島は、女人禁制の霊場であり奥州の高野山とも称されていた。かつて雄島には108もの石窟があったという。現在は50程度しか残っていないものの、それでも霊場の雰囲気を感じることは十分できる。

2007年10月訪問




【アクセス】

JR仙石線「松島海岸駅」より徒歩約5分。
JR東北本線「松島駅」より徒歩約10分。

【拝観情報】

湾内を巡る遊覧船あり。

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