塩尻市奈良井

―塩尻市奈良井―
しおじりしならい

長野県塩尻市
重要伝統的建造物群保存地区 1978年選定 約17.6ヘクタール


 古くより、美濃から信濃へ至る主要街道として栄えてきた木曽路。江戸時代には中山道の一部ともなり、木曽路の各町には宿場が置かれていた。中でも木曽路最大の難所である鳥居峠を直後に控える奈良井宿は、木曽路11宿でも最大の規模に発達、奈良井千軒と呼ばれるほどに栄えた宿場町であった。




職人の居住区であった下町の町並み

 奈良井の町並みは、その道沿いに約1kmに渡って続いている。北から下町、中町、上町の3エリアに分けることができ、それぞれ異なる職業の人々が住んでいた。奈良井の入口、下町は漆塗職人や曲げものを扱う檜物職人の居住区であった。奈良井の中で最も道幅が狭く、込み入った印象を受けるが、それもまた職人町ならではの風情であろう。




間口の広い家屋が連なる中町

 細く曲がりくねった下町を越えると、突然視界が開け、広々としたエリアに出る。中町である。中町はかつて本陣が置かれ、問屋や旅篭も数多く存在したいわば町の中心。それゆえ道幅が他より広く、家屋の間口も広く取られ、実に開放的な雰囲気を持っている。




奈良井上町、元問屋中村邸周辺

 中町から鍵の手と呼ばれるクランク状の曲がり角を曲がると、上町となる。上町は塗り櫛の職人や問屋が集まっており、旅篭も多かった。なお、櫛問屋であった中村邸は資料館として現在一般にも開放されている。上町の最上部には奈良井の鎮守、鎮(しずめ)神社が鎮座しており、そして道は鳥居峠への登山道へと繋がっていく。




奈良井の典型的な建造物
鎧ひさしは奈良井独特のものである

 奈良井の建物は、二階を少しせり出す「出梁(だしばり)造り」が特徴だ。かつては板葺きの石置き屋根であったが、今はそのほとんどが鉄板葺きである。一階には「鎧ひさし」と呼ばれる大きなひさしが設けられており、ひさしを押さえる桟木はまるで連なる猿のようであることから「猿頭(さるがしら)」と呼ばている。




上町にある水場の屋根は伝統の板葺き
隣には幕府の達しが掲げられていた高札場がある

 木曽谷にいだかれる奈良井は、極めて水が豊かな町である。それを示すかのように、奈良井には6箇所の水場が設けられており、絶えず豊富な水を人々に供給してくれている。この水は、旅人の飲料水、町民の生活用水、火災から町を守る防火用水としても用いられていた。この清らかな水は、今でも道行く人々の喉を潤し続けている。

2007年04月訪問




【アクセス】

JR中央本線「奈良井駅」より徒歩約5分。

【拝観情報】

町並み散策自由(ただし、住民の迷惑にならないように)。

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