―塩尻市木曾平沢―
しおじりしきそひらさわ
長野県塩尻市 重要伝統的建造物群保存地区 2006年選定 約12.5ヘクタール 長野県南部、木曽谷を南北に通る木曽路の町々は、昔から伝統工芸の盛んな土地である。中でも宿場町奈良井のすぐ北、奈良井川が湾曲する河川敷、中山道に沿って広がる木曾平沢は、全国有数の漆器産業の町として知られており、そこには漆器店や漆器職人の住居が数多く集まっている。 木曾平沢の町並みは、二階を一階よりわずかにせり出した出梁造(だしばりづくり)など、江戸時代から昭和にかけての様々な時代、様々なタイプの建築を見ることができる。通りに対し趣ある漆器店が連続するその光景は、他の重伝建で見られるような同一建築が連続して建つ町並みとは趣を異にする。 平沢の家屋は、蛇行する中山道に沿って短冊状に地割がなされている。家屋はそれぞれ、主屋の前にアガモチと呼ばれる三角形の空地を設けることで、湾曲する道に対しても全家屋が同一方向を向いて建てられるようになっている。また、主屋も敷地いっぱいに間口を取らず、隣家との間に余裕を持って建てられており、その主屋裏へと通ずる道を確保している。 漆器を製作する職人の家では、主屋の裏に塗蔵と呼ばれる漆器製造のための蔵を持つものが多い。漆喰で塗り固められた蔵は、外気から遮断され埃などが入らず、また温度と湿度が一定に保たれるため漆塗りに適しているのだ。二階建ての塗蔵は、一階では下地付け、研ぎ作業が行われ、二階で中塗や上塗の作業が行われている。これら塗蔵は、漆工の町平沢を特徴付けるものでもある。 平沢では本通りと呼ばれているかつての中山道。その通り沿いには立派な漆器店が軒を連ね、漆器産業の町としての色を出しているが、漆工町平沢はそれのみに尽きるものではない。本通りより一本西には、金西町と呼ばれる通りが本通りに平行して南北に走っている。大正時代になってようやく開かれたこの金西町は、店舗を持たない漆器職人たちが住む職人町だ。 職人町ということもあり、金西町の通りは住宅がメインで店舗は少ない。一見すると少し古いだけの普通の町であるが、その敷地の奥には塗蔵が見られたり、漆を精製する施設があったりと、漆工の町ならではの光景をいたるところに目にすることができる。漆器店が連なる本通り、職人が集まる金西町。木曾漆器の生産から販売までのプロセスを示していることこそが、平沢が高く評価される最たる理由なのである。 2007年04月訪問
【アクセス】
JR中央本線「木曽平沢駅」より徒歩約5分。 【拝観情報】
町並み散策自由(ただし、住民の迷惑にならないように)。 ・塩尻市奈良井(重要伝統的建造物群保存地区) ・南木曾町妻籠宿(重要伝統的建造物群保存地区) ・恵那市岩村町本通り(重要伝統的建造物群保存地区) Tweet |