三内丸山遺跡

―三内丸山遺跡―
さんないまるやまいせき

青森県青森市
特別史跡 2000年指定


 青森県のほぼ中央に聳える八甲田山の北麓に位置する青森市。その中心市街地南西の丘陵地帯から青森湾へと流れる沖舘川(おきだてがわ)の右岸台地上に、縄文時代前期〜中期(約5900〜4200年前)に形成された縄文遺跡である三内丸山遺跡が存在する。1700年もの長期に渡って営まれてきた大規模かつ拠点的な集落であり、竪穴住居、土坑墓、埋設土器、貯蔵穴、大型掘立柱建物、盛土遺構など様々な遺構が計画的に配置されている。また当時の生活や生業、交流、自然環境などを示す膨大な量の遺物が出土しており、縄文文化の実態と変容の様相を示す極めて重要な遺跡であることから、まず平成9年(1997年)に国の史跡に指定され、その後の平成12年(2000年)には特別史跡に指定された。




高床式の建物として復元された北地区の掘立柱建物

 三内丸山遺跡は江戸時代後期の紀行家である菅江真澄(すがえますみ)によって紹介されるなど、その存在は昔から知られていた。戦後に小規模な調査が行われており、また昭和48年(1973年)からは県営運動公園の建設に伴う発掘調査が実施され、以降も断続的に開発の事前調査が行なわれた。平成4年(1992年)になると、遺跡全体の範囲を超える大規模な運動公園の拡張計画が立ち上がる。野球場建設予定地であった北地区について発掘調査が進められたところ遺跡の重要性が認識され、平成6年(1994年)に保存が決定した。その後も調査と共に史跡公園としての整備が進められ、現在はエントランス施設として縄文時遊館が設置されており遺跡の公開管理と情報発信を行っている。




土器に納められ埋葬された子供の墓地だと考えられる埋設土器

 山内丸山遺跡に人が住み始めたのは縄文時代の前期中葉であり、この時期は北地区の北の谷から台地中央にかけて集落が存在した。その北側には小さな子供の墓である埋設土器が密集する。棺として使用された土器には穴を開けるなど人為的行為が見られ、こぶし大の丸石を1〜2個入れているものもある。北の谷から北斜面には捨場が形成されており、その低湿部からは土器や石器のほか、漆塗りの木器、小型カゴなどの編物、釣針や縫針などの骨角器など多種多様な遺物が出土している。食料はクリやクルミを始め、マメ類など栽培植物も見られる。縄文時代に一般的であったシカやイノシシなどの大型獣は少なく、ムササビやウサギなどの小型獣、ガンやカモなどの鳥類、カツオやサバなどの魚類が多い。




巨大な柱の根が残る「大型掘立柱建物」の遺構

 縄文時代中期に入ると、集落は拡大して北地区の全体に広がるようになる。居住域は北の谷の西側と東斜面に分布しており、台地の中央部には列状の土坑墓が、中央から北側には大型竪穴住居が築かれた。南北西の三箇所には捨場である「盛土遺構」が形成され始めるようになり、また北の谷の東側にあたる沖館川に面した台地縁辺部には貯蔵穴が密集して存在する。さらに台地北西端のやや高くなったところからは、太さ1メートル前後のクリの巨木を4.2メートルの等間隔で長方形に6本配した遺構が出土している。これは「大型掘立柱建物」と呼ばれ、三内丸山遺跡のシンボル的存在となっている。その用途は定かではなく、祭祀を行なう宗教施設、物見櫓、モニュメント、倉庫など様々な説がある。




大量の土器や石器などの遺物が土と共に埋まっていた北盛土の遺構

 中期中葉になると、集落の範囲は北地区のみならず谷を挟んだ南地区や、さらに南東の谷を挟んだ近野地区にまで広がった。北地区では道路工事も行なわれており、地面を平らに削って生じた土は不用品と共に捨場に積まれ、盛土遺構がますます大型化した。埋設土器や列状土坑墓なども中期後葉になるまで造成が続き、この時期のものが最も多く発見されている。南地区には中期後葉を中心に南東斜面に竪穴住居や柱穴群が築かれ、一段高い尾根上には南北二列に並ぶ土坑墓や配石遺構が築かれた。また近野地区では大型竪穴を含む竪穴住居群が確認されている。中期末葉になると集落は急激に縮小して北地区の北の谷西側に住居や土坑が見られるだけとなり、程なくして終焉を迎えた。




重要文化財である十字型板状土偶のレプリカ

 三内丸山遺跡からは数多くの遺物が出土しているが、中には周辺地域では入手できない品々も含まれており、他地域と交易が活発に行なわれていたことが分かる。装飾品に使うヒスイは新潟県の糸魚川産であり、完成品のみならず原石や未製品も含まれることから集落内で加工が行われていたことが分かる。黒曜石は北海道の白滝や秋田県の男鹿、長野県の和田峠など様々な産地のものがあり、また石鏃を矢に固定する接着剤として秋田産のアスファルトが使われている。これらの出土品は質量ともに豊富である上、有機質遺物も数多く含まれており、当時の生活を知る上で極めて貴重であることから平成15年(2003年)に計1958点が『青森県三内丸山遺跡出土品』として重要文化財に指定された。

2007年10月訪問
2019年09月再訪問




【アクセス】

青い森鉄道線「青森駅」より青森市営バス「三内丸山遺跡」行きで約30分、「三内丸山遺跡バス停」下車すぐ。

【拝観情報】

入場料:大人410円、高校生・大学生等は200円、中学生以下無料。
開館時間:6月〜9月およびゴールデンウィークは9時〜18時、それ以外は9時〜17時(入場は閉館の30分前まで)。
休館日:毎月第4月曜日(祝日の場合は翌日)および年末年始(12月30日〜1月1日)。

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【参考文献】

三内丸山遺跡|国指定文化財等データベース
青森県三内丸山遺跡出土品|国指定文化財等データベース
三内丸山遺跡について|三内丸山遺跡
リーフレットなど|三内丸山遺跡
特別史跡三内丸山遺跡整備計画|三内丸山遺跡