東大寺法華堂、東大寺二月堂

―東大寺法華堂―
とうだいじほっけどう
国宝 1951年指定

―東大寺二月堂―
とうだいじにがつどう
国宝 2005年指定

奈良県奈良市


 平城京の東、若草山の麓に創建されたその大寺院は、奈良時代の天平5年(733年)に建てられた金鐘寺(こんしゅじ)を起源とする。天平13年(741年)、聖武天皇が国分寺建立の詔(みことのり)を発すると、金鐘寺は大和国の国分寺に改められ、また全国国分寺の総本山として壮大な七堂伽藍が整えられた。その広大な境内のうち、東大寺の中心を担う大仏殿より山を少々登った所に位置する法華堂(三月堂)は、金鐘寺であった当時より存在した東大寺最古級の歴史を持つ古建築であり、国宝に指定されている。また、法華堂北側の高台に建つ二月堂は、江戸時代の建造と比較的新しい建物ではあるものの、完成度の高い懸造(かけづくり)の堂宇として、2005年に国宝指定された。




東大寺法華堂
向かって左側が奈良時代の正堂、右側が鎌倉時代の礼堂だ

 東大寺法華堂は、寄棟造りの正堂(しょうどう、仏像を安置する為の部屋)と、入母屋造りの礼堂(らいどう、礼拝の為の部屋)が接続された構造である。元々は、それぞれ独立した正堂と礼堂の二棟が並ぶ、双堂(ならびどう)の形式であった。このような双堂形式は古代の寺院によく見られたが、双堂形式の痕跡を残す建物は数少なく、建築史的にも貴重である。正堂の部分は奈良時代の天平12〜19年(740〜747年)頃に建てられたもので、礼堂の部分は鎌倉時代初期の正治元年(1199年)に増築されたもの。二棟を一つに纏めた建物である為、全体の規模は桁行五間に梁間八間と奥行きが深く、そのうち正堂は奥四間、礼堂は手前二間で、間の二間は正堂と礼堂を繋ぐ「造り合い」である。




大仏様で建てられた法華堂礼堂の内部

 建てられた時代が違う正堂と礼堂は、用いられている建築様式も異なっている。正堂は長押(なげし、柱の上に打ち付ける水平材)を回し、柱の上に出組の組物を持つ日本古来の和様建築であるのに対し、礼堂は貫(ぬき、柱をくり貫いて通す水平材)を用い、その突出部分に木鼻(きばな)を設けた大仏様の建築となっている。平安時代末期、東大寺は平氏により焼き討ちされ、主要伽藍を失った。その際、東大寺の復興に尽力したのが、俊乗房(しゅんじょうぼう)重源(ちょうげん)である。重源上人は大仏殿や南大門といった巨大建築を建てるにあたり、宋より伝来した大仏様の建築様式を採用した。この法華堂の礼堂もまた重源上人が増築したものであり、それ故大仏様なのである。




斜面に懸造で建てられた、東大寺二月堂

 礼堂の内部には床が張られているが、正堂内部は土間である。しかし正堂にも、かつては板張りであったその痕跡が認められるという。土間が一般的であった奈良時代の仏堂において、これは非常に珍しい例だ。正堂の天井は折上格天井(おりあげごうてんじょう)で、その下に通された二本の大虹梁が屋根の荷重を支えている。正堂の中央に据えられた須弥壇には、本尊の不空羂索観音(ふくうけんじゃくかんのん)を始めとした奈良時代の仏像が数多く安置され、そのほとんどが国宝である。不空羂索観を本尊とする事から、奈良時代は羂索堂と呼ばれていた。旧暦の3月に法華会が営まれる事から平安時代以降は法華堂と呼ばれ、また江戸時代以降は三月堂とも呼ばれるようになった。




二月堂を南側後方から望む
江戸幕府が築いた建造物の代表例だ

 法華堂から北門(鎌倉時代のもので重要文化財)を挟んだ北隣には、旧暦の2月にお水取りの修二会(しゅにえ)が行われる二月堂が存在する。二月堂は急斜面の上に長い束柱を立てて建立されており、このような建築を懸造、もしくは舞台造という。修二会の為だけに特化して作られた特異な建造物で、その創建は修二会が始められた8世紀にまで遡る。近世まで創建当時の建物が残っていたものの、江戸時代の寛文7年(1667年)に行われた修二会の際に焼失。現存するものは、江戸幕府第四代将軍、徳川家綱(とくがわいえつな)によって寛文9年(1669年)に再建されたものだ。それまでの様式を踏襲しながら近世の技法を取り入れた、江戸時代を代表する建造物の一つとされる。




舞台側から見る二月堂正面
奥に見える畳張りの小部屋は、一般参拝者が唯一入れる西局だ

 二月堂の規模は、正面七間に奥行き十間。本尊の十一面観音を安置する三間四方の内陣を中心として、その西側以外の三方に一間幅の外陣を設け、また外陣の外側をさらに局(つぼね)と呼ばれる小部屋で取り囲んでいる。内陣の西側は五間三間の礼堂となっており、その北、南、西側にもそれぞれ局が付属している。本尊は絶対秘仏で何人たりとも目にする事ができず、また内陣、外陣も修二会を執り行う練行衆(れんぎょうしゅう)以外の立ち入りは禁じられている。二月堂の周囲には、二月堂と共に修二会で使われる参籠所(さんろうしょ)、仏餉屋(ぶっしょうのや)、閼伽井屋(あかいや)が設けられており、それらはいずれも鎌倉時代後期の建造で、重要文化財に指定されている。

2006年12月訪問
2011年03月再訪問




【アクセス】

近鉄奈良線「近鉄奈良駅」より徒歩約20分。
JR奈良線「奈良駅」より徒歩約30分。

【拝観情報】

境内自由。
法華堂(三月堂)の内部拝観は拝観料500円。
拝観時間は11月〜2月が8時〜16時30分、3月は8時〜17時、4〜9月が7時30分〜17時30分、10月が7時30分〜17時。

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