東照宮 本殿、石の間及び拝殿、東照宮 正面及び背面唐門、東照宮 東西透塀

―東照宮 本殿、石の間及び拝殿―
とうしょうぐう ほんでん、いしのまおよびはいでん

―東照宮 正面及び背面唐門―
とうしょうぐう しょうめんおよびはいめんからもん

―東照宮 東西透塀―
とうしょうぐう とうざいすきべい

栃木県日光市
国宝 1951年指定


 関ヶ原の戦いにおいて勝利を収め、慶長8年(1603年)から約260年にもおよぶ江戸幕府を開いた徳川家康。その死後は久能山(くのうざん)に埋葬されたのち日光山に改葬され、家康を「東照大権現(とうしょうだいごんげん)」として祀る「東照宮」が築かれた。現存する東照宮の社殿群は江戸幕府第三代将軍の家光によって寛永13年(1636年)に整備されたものであり、家康および幕府の権威を天下に誇示すべく荘厳華美に装飾されている。それは彫刻、漆塗、彩色、飾金具など装飾と建築が一体化した、江戸時代前期における造形と意匠の集大成であり、本殿、石の間、拝殿から成る「社殿」、およびその前後に構えられた「唐門」、社殿を取り囲む「透塀」が、それぞれ国宝に指定されている。




本殿と拝殿の入母屋妻面を望む
写真では見えないが、両棟を石の間が繋いでいる

 社殿は「本殿」と「拝殿」を「石の間」で接続して一棟としており、エの字型の棟を持つ構造である。当時代の一般的な社殿形式であるが、東照大権現を祀る東照宮に採用されたことで以降は「権現造」と呼ばれるようになった。「本殿」は桁行五間、梁間五間、屋根は入母屋造であり、背面に一間の向拝を付している。「石の間」は桁行三間、梁間一間、屋根は両下造(りょうさげづくり、建物に接続するため妻面を持たない切妻造)だ。「拝殿」は桁行九間、梁間四間、屋根は入母屋造であり、正面に千鳥破風を載せ、軒唐破風を備えた三間の向拝を付している。いずれも建立当初は檜皮葺であったが、火事で焼失する危険性があったことから承応3年(1654年)に黒漆塗の銅瓦葺に改められた。




龍や息(龍に似た、豚のような鼻を持つ霊獣)などの彫刻で装飾された拝殿の向拝
現在は鈴が吊られているが、明治の神仏分離令以前は鰐口であった

 「拝殿」の内部は中央五間が「中の間」であり、折上格天井の格間には龍が描かれている。東側二間は「将軍着座の間」、西側二間は「法親王着座の間」であり、さらに格式の高い二重折上格天井や、唐木象嵌の壁面など豪華極まりない造作である。「石の間」は床が低く造られており、本殿へ上がる階段には真鍮板が張られている。「本殿」は「幣殿」「内陣」「内々陣」の三室に分かれており、内々陣では「御空殿(ごくうでん)」と呼ばれる厨子の中に家康像を祀る。いずれも煌びやかに装飾されており、特に本殿と拝殿には平和な世の中にしか現れないとされる獏(ばく)の彫像が56頭刻まれており、泰平の世を願う幕府の考えを表している。また附けたりとして大工道具や旧妻戸なども国宝だ。




正面唐門は数多くの人物像によって飾られている

 「唐門」は社殿の前面および背面の中央部、石積で築かれた基壇の上に構えられている。そのうち正面唐門は桁行一間、梁間一間、屋根は黒漆で塗られた銅瓦葺で、前後左右に唐破風を備える「四方唐破風造」である。胡粉塗りの白色を基調とし、随所に鍍金の錺金具や蒔絵を施し、陽明門よりも多い611体の彫刻によって全体を装飾している。各唐破風の上には鬼板を載せ、門番として正面および背面には恙(つつが、獅子に似た、虎や豹、人間を襲うとされる霊獣)、左右には龍を置いている。これは「龍は昼を守護し、恙は夜を守護する」という中国の故事によるものだ。いずれも青銅製であり、幕府の鋳物師であった椎名兵庫(しいなひょうご)の作である。




唐木象嵌の龍が、胡粉の白地に良く映える

 正面唐門の柱には波の地紋彫が施され、唐木象嵌で昇り龍と降り龍を表している。また人物の彫像が多いのが特徴で、正面唐破風の下には権力を忌み嫌う故事である「許由巣父(きょゆうとそうほ)」の彫刻が、君主の戒めとして掲げられている。台輪の上には「舜帝朝見(しゅんていちょうけん)の義」の彫刻があり、27人の人物が並ぶ姿が圧巻だ。西側は「七福神」、東側は「八仙」、背後には第二代将軍秀忠の干支である「兎」、および「竹林の七賢人」の彫刻が見られる。社殿の裏にある背面唐門は一間一戸の平唐門で、同じく黒漆塗の銅瓦葺だ。扉や軒回りは黒漆塗であり、柱などには金箔が押され、随所に錺金具を施すなど、ほとんと人目に触れない部分でありながらも豪華な造りとなっている。




透塀は黒漆で塗られ、彩色された彫刻や金箔で装飾されている

 社殿を取り囲む「透塀」のうち、西透塀は正面唐門から背面唐門まで四十四間(約79メートル)に渡って続いており、石の間の側面に開かれた戸口の位置には潜門を設けている。一方で東透塀は潜門の代わりに通路を空けており、故に総延長は西透塀よりも一間短い四十三間(約77メートル)となっている。いずれも全体を黒漆で塗っており、随所に鍍金の錺金具を施している。柱と柱を繋ぐ長押(なげし)は亀甲花菱紋様が描かれており、内法(うちのり)長押の上部に入る欄間には花鳥、腰長押の下部に入る蹴込には水鳥の彫刻を施している。上下長押間の胴羽目には緑青の縁取りと金箔格子のコントラストが鮮やかな「花紋花狭間格子窓」を入れており、胡粉塗の唐門を引き立てている。

2006年05月訪問
2011年04月再訪問
2017年09月再訪問
2021年09月再訪問




【アクセス】

・JR日光線「日光駅」または東武鉄道日光線「東武日光駅」から東武バス「中禅寺温泉・湯元温泉方面行き」で約10分、「西参道入口」バス停下車、徒歩約10分。
・JR日光線「日光駅」または東武鉄道日光線「東武日光駅」から徒歩約40分。

【拝観情報】

・拝観料:大人1300円、小中学生450円。
・拝観時間:4月1日〜10月31日は9時〜17時、11月1日〜3月31日は9時〜16時(入場は閉場30分前まで)。

【参考文献】

東照宮 本殿、石の間及び拝殿|国指定文化財等データベース
東照宮 正面及び背面唐門 (正面唐門)|国指定文化財等データベース
東照宮 正面及び背面唐門 (背面唐門)|国指定文化財等データベース
東照宮 東西透塀 (東透塀)|国指定文化財等データベース
東照宮 東西透塀 (西透塀)|国指定文化財等データベース
・講談社MOOK 国宝の旅
とちぎの文化財【東照宮 本殿、石の間及び拝殿】
とちぎの文化財【東照宮 正面及び背面唐門】
とちぎの文化財【東照宮 東西透塀】

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