法隆寺中門、法隆寺廻廊 東廻廊、西廻廊

―法隆寺中門―
ほうりゅうじちゅうもん
国宝 1951年指定

―法隆寺廻廊 東廻廊、西廻廊―
ほうりゅうじかいろう ひがしかいろう、にしかいろう
国宝 1951年指定

奈良県生駒郡斑鳩町


 飛鳥時代に聖徳太子こと厩戸皇子(うまやどのおうじ)によって創建され、現在も数多くの歴史的建造物が軒を連ねる法隆寺。その広大な境内の正面玄関にあたる南大門をくぐると、築地塀が連なる参道の先に見えるのが中門である。中門は法隆寺の中枢であり世界最古の木造建築群として名高い西院(さいいん)伽藍の正門であり、その左右から伸びる廻廊と共に西院伽藍の聖域を区画している。中門内部の右手には金堂、左手には五重塔が聳え、中門と廻廊によって取り囲まれた建造物群が古代の寺院景観を見せている。この中門と廻廊もまた金堂や五重塔と同様に飛鳥時代の壮麗な建築様式を今に伝える貴重な存在であり、それぞれが国宝に指定されている。




参道から中門越しに西院伽藍を望む

 推古天皇9年(601年)に斑鳩宮を造営した聖徳太子は推古天皇13年(605年)に移り住み、推古天皇15年(607年)に宮殿の西隣に斑鳩寺を建立した。創建当初の伽藍は天智天皇9年(670年)に大火で焼失したと日本書紀に記されており、それを裏付ける遺構も発見されている。間もなく再建が開始され、奈良時代の初頭までに現在の法隆寺西院伽藍が整備された。中門に安置されている金剛力士像および五重塔の初重に安置されている塑像群は和銅4年(711年)に完成したことが史料により明らかになっており、中門や五重塔はそれ以前に完成していたことは間違いない。正確な建立年は明らかではないが、七世紀後半と考えられる金堂と五重塔に次いで中門、そして廻廊が築かれたと考えられる。




基壇に埋め込まれた礎石の上に胴張の丸柱が立つ
慶長年間および元禄年間の修理により飛貫が付加されるなどの改変を受けた

 中門は下層にも屋根を備える二重門であり、入母屋造の本瓦葺である。その最大の特徴は、正面四間、側面三間という特異な平面構造だ。側面を三間とする例は、発掘調査によって飛鳥寺や大官大寺の中門など飛鳥時代の寺院において確認されているが、正面を四間とするものは例は他になく極めて異例である。寺院の門は正面を奇数間とするのが通常だが、法隆寺中門は四間と偶数であるため二間に戸を開き、中央には柱が立っている。この柱が怨霊を封じているという説や、左右の入口がそれぞれ金堂と五重塔に振り分けられているという説など様々な解釈が唱えられているが、いずれも定説には至っておらず、なぜ四間としているのか理由は定かではない。




雲形組物や高欄など、金堂や五重塔と同様の意匠である

 金堂および五重塔と同様、中門もまた飛鳥時代における仏教寺院建築の特徴を色濃く残している。軒に出る組物は雲形に彫られた「雲形組物」であるが、金堂に見られる渦紋は中門には施されていない。丸柱は中央付近が膨らみ上下がすぼむ「胴張」であり、その上に皿斗付きの大斗を乗せ、肘木と雲斗の上に通肘木を重ねるのは金堂と同様だ。上層の周囲には卍崩しの組子を入れた反りのない高欄を巡らしており、その地覆は三斗および人字形割束(人の字のように下部が二手に分かれた中備)で受けるのも金堂と同じである。軒は一軒(ひとのき)でありながら、尾垂木の先に乗せた巻斗と雲肘木により出桁を支え、より深い軒を実現している。




中門でにらみを利かせ、西院伽藍を守護する金剛力士像(阿形)

 中門の正面左右間には、前述の通り和銅4年(711年)に完成した金剛力士立像が安置されている。向かって右の阿形は像高379.9センチメートル、左の吽形は像高378.5センチメートル。金剛力士像としては珍しい塑像であり、「塑造金剛力士立像(吽形体部木造)」として重要文化財に指定されている。指定名に(吽形体部木造)とある通り、吽形は16世紀前半の修理によって胴体が木造に置き換えられている。また阿形も奈良時代末期頃に大幅に作り変えられたことが判明しており、その後も繰り返し補修されてきた。粘土で造形する塑像はただでさえ水に弱く、室内ではなく外気や紫外線に晒される屋外に安置されてきただけに、劣化と修復は宿命といえるだろう。




廻廊の内側は吹放ちだが、外側は連子窓で閉ざしている
金堂や五重塔と同じ特徴を見せており、建立年代が近いことを示す

 中門から東西に伸びる廻廊は、金堂と五重塔を取り囲み、屈折しつつ経蔵と鐘楼を経由して大講堂へと接続する。しかしながら、建立当初は金堂と五重塔の背後で閉じており、大講堂、鐘楼、鼓楼は廻廊の外側に位置していた。現在のように大講堂に接続するようになったのは、大講堂が再建された平安時代中期であると考えられている。東廻廊の延長は四十二間、西廻廊の延長はは四十間と東廻廊の方が長いが、これは西側の五重塔よりも東側の金堂の方が横幅が長いため、堂塔と廻廊の間隔を均等に見せるための工夫である。廻廊の梁間は3.7メートルの単廊であり、内側は吹放ちだが外側は出入口以外を連子窓で閉ざしている。丸柱はやはり胴張であり、斗栱も金堂や五重塔と同様の特徴を見せる。

2006年05月訪問
2010年04月再訪問
2022年04月再訪問




【アクセス】

・JR関西本線「法隆寺駅」から徒歩約20分。
・JR関西本線「法隆寺駅」から奈良交通バス「法隆寺参道」行きで約10分、「法隆寺参道」バス停下車、徒歩約5分。
・近鉄橿原線「近鉄郡山駅」から奈良交通「法隆寺前」行きバスで約30分、終点下車、徒歩約10分。

【拝観情報】

・拝観料:中学生以上1500円、小学生750円(西院伽藍、大宝蔵院、東院伽藍を含む)。
・拝観時間:2月22日〜11月3日は8時〜17時、11月4日〜2月21日は8時〜16時半。

【参考文献】

聖徳宗総本山 法隆寺
法隆寺中門|国指定文化財等データベース
法隆寺廻廊 東廻廊|国指定文化財等データベース
法隆寺廻廊 西廻廊|国指定文化財等データベース
・講談社MOOK 国宝の旅

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