暫定リストには載っていない。でも個人的には世界遺産の可能性があると思っている、そんな日本国内の物件を紹介します。 ・日光杉並木街道(「日光の社寺」への拡大登録) 日光東照宮への参詣道に松平正綱が1625年から20年かけて植えた、全長37kmにも渡る杉並木。そのストーリー、ユニークさから、「日光の社寺」への拡大登録が十分可能だと思います。 ・中部地方の縄文遺跡群 現在、暫定リストには「北海道・北東北の縄文遺跡群」が記載され、大小数多くの遺跡が列挙されていますが、むしろ北海道、東北の縄文遺跡は「三内丸山遺跡」や「大湯環状列石」、「亀ヶ岡遺跡」などといった主要なものに限定し、中部地方の「尖石遺跡」や「笹山遺跡」などといった、日本各地(特に中部)の代表的な縄文遺跡を組み入れた方が、世界遺産への可能性は高まると思います。 ・東山一帯、大徳寺、京都御所など(「古都京都の文化財」への拡大登録) 「古都京都の文化財」が世界遺産となったその当初、政府は境内(敷地)が史跡や名勝などで保護されている寺社(+二条城)のみを選んで推薦しました。しかし、それはあまりに限定的すぎで、京都にはまだまだ拡大登録可能な個所が数多く残っていると思います。 茶の湯など、日本の文化に多大な影響を与えた大徳寺はもちろん、京都御苑(京都御所、仙洞御所)、桂離宮、修学院離宮も(宮内庁所管なのでどう保護策を取るかという課題はありますが)価値的には間違いないかと。東山も清水寺、慈照寺(銀閣寺)だけでなく、南禅寺や知恩院、八坂神社、産寧坂の町並み、南は東福寺や伏見稲荷大社、それら背後の山々を含む東山一帯に広げたり、また嵐山も天龍寺の境内だけではなく史跡名勝に指定されている嵐山の範囲全体や鳥居本の町並みを含む嵯峨まで含めるなど、全体的に大幅な範囲拡大が可能だと思います。 近年、大徳寺や京都御所などの拡大登録運動の動きが聞かれますが、ぜひ点での拡大登録ではなく、面での登録を目指していただきたいものだと思います。 ・近世日本の大名庭園群 小石川後楽園、旧浜離宮庭園、兼六園、岡山後楽園、栗林公園など、江戸時代を代表する大名庭園の一括登録。十分可能なのではないかと思います。 近年、金沢や水戸、岡山といった城下町の世界遺産運動が聞かれますが、それらよりも良好に残る大名庭園を地方横断的に推薦した方が可能性は高いと思います。 ・八重山の文化的景観 八重山の離島には、美しい自然環境の中、台風の暴風に備えた伝統的な集落や、人々の信仰空間である御嶽(ウタキ/オン)、琉球時代の遺跡、畑や牧場など、良好な文化的景観が広がっています。祭事も豊富で、生きた琉球文化が良好に残る地域です。 現在、八重山諸島において重要伝統的建造物群保存地区(以下重伝建)として町並みの保護が担保されているのは竹富島のみですが、波照間島でも重伝建の選定に向けた調査が行われていますし、黒島や小浜島などの島々も伝統家屋は少なくありません。 時間をかけて改変された家屋を戻すなど景観を整備していけば、文化遺産あるいは西表石垣国立公園を含めた複合遺産になれるポテンシャルを秘めていると思います。もっと言えば、竹富島と同じく重伝建に選定されている渡名喜島などと合わせ、自然遺産を目指して準備が進められている琉球諸島を複合遺産にできる可能性もなくはないと思います。 |